永遠に失われしもの 第15章
「アナタが見たとき、
絵が無かったからといって、
それが一体何だっていうんです?
それよりも、
あの時、私のデスサイズが
アナタの腕じゃなく、
心臓にささっていたならと、
私は今でも心残りです」
その後ロナルドが戦線離脱することもなく
自分も監視要員などに狩り出されることも
なかった筈なのに・・と考え、
ウィルはセバスチャンと睨む。
セバスチャンは、ウィルのそんな様子は
無視して、話続けた。
「それでは貴方に良い事をお教えましょう。
カール・オレイニクの魂は、恐らくまだ
回収できますよ。
私は彼の魂は喰らってませんから−−」
「殺したのに、喰わなかったと?」
「私は嘘はつきません。
ついでに言えば、
私は殺しもしてませんよ、
彼のことは。
ただ、彼に会いに行っただけです。
貴方が見たという、
彼の絵を貰いにね」
信じられないという素振りで、ウィルは
頭を振る。
「でも実際に、カール・オレイニクの魂は、
回収不能だった。
アナタが喰らってないなら、
なぜ彼の魂は・・・」
「彼の魂は、恐らく絵の中でしょう」
ウィルは、セバスチャンを見つめる。
「そして、誰かがそれを持ち去った・・」
セバスチャンは、にっこりと優美な微笑を
ウィルに向けた。
「ええ、私はその絵を返してもらいたい。
貴方は、その魂を回収したい。
どうです?私たちの目的は一致してると
思いますが−−」
「悔しいですが、認めざるを得ませんね。
ですが、どうするつもりです?
持ち去った者の、
心あたりはあるのですね?」
「ええ、二、三。
しかし私は、いつ悪魔召還されてしまう
かわからない状態の、
ぼっちゃんを独りにできません。
貴方がぼっちゃんを見ていてくだされば、
その間に調べられるのですが−−」
ウィルはセバスチャンを、
きっと睨んで言った。
「それはできない相談ですね。
いざ、見つけた時、絵から魂を抜きとって
喰らうつもりなのではないですか?
それよりその心当たりとやらを、
私に教えなさい。
派遣課から人を送って調べさせます」
「それでは、
私に絵が渡される保障がありませんね」
どちらも相手に譲るつもりもなく、ただ
沈黙の時間が過ぎていく。
ついに、その沈黙を破ってセバスチャンが
話し始めた。
「では、お互いの中立を保つ者として、
葬儀屋さんに私と同行してもらう−−
いかがですか?」
「いいでしょう・・
くれぐれも、下手な計略や策略はしない方
が身のためですからね」
作品名:永遠に失われしもの 第15章 作家名:くろ