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こらぼでほすと 闖入8

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 もりもりと、抹茶あんみつを食べている悟空の横には、茶蕎麦がふたつ置いてある。舞妓、芸妓たちも、一緒に相伴して悟浄が楽しそうに会話している。天蓬の前にも、いろんなスィーツが並んでいて、となりの亭主は呆れつつ、グリーンティーで付き合っているし、八戒のほうも同様だ。
「ここ、やっぱ、すげぇーよっっ。美味いし、量はたっぷりだし、最高だ。」
「いやぁーぼっちゃん、嬉しいこと言うてくれはる。どんどん注文しておくれやす。」
「うんっっ、全部のメニューを制覇するぜっっ、天蓬、付き合え。」
「はいはい、でも、僕のは悟空の五分の一ぐらいの量でお願いしますね。」
 スィーツ好きの天蓬といえど、悟空の量は無理がある。だから、全メニュー制覇に付き合うなら、これぐらいのことになる。
「確かに、ここの抹茶は美味しいですよ、三蔵。フレッシュだし甘みもあります。」
 付き合うつもりの八戒の前には、天蓬のものよりこじんまりしたものが置かれている。概ね、悟空の十分の一の量だろう。
「デザートは別腹って女の子は言うけどさ、ほんとなんだな。・・・俺、絶対に無理。」
 悟浄も一応付き合っているが、早々にリタイヤするつもりだ。会席料理を平らげて、酒も呑んでいるのだ。さすがに、腹が満腹だ。女の子はいないが、スィーツ好きの神様や妖怪が、嬉々としてデザートを平らげているのには感心する。
「ここぞとばかりに食うんだから怖ろしいな。」
 捲簾も適当にグリーンティーでしか付き合えない。酒の後に、これは辛い。金蝉と三蔵も茶蕎麦を啜りつつ、おう、と、その意見に賛同する。
「そういうことでしたら、伏見の一品を出しましょう。」
 女将が、甘いものは苦手な面子には、新しい酒を用意してくれる。舞妓たちは、悟空に付き合っているが、粋な芸妓たちは、金蝉たちに酌をしてくれる。わいわいと、賑やかに、辻利の店で宴会になっているが、結界を張ってあるので外には漏れていない。最終的に、こちらの関係者たちも入り乱れての騒ぎになって夜は更けた。




 秋雨が終ると気温は、ぐっと下がった。ただし、天候は晴れて安定している。夕方から、店の開店準備を手伝ったり、経理のほうをやったりで、ニールも働いている。ついでに、黒子猫もホストをやっている。キラのヘルプということで、くっついているが、アスランが刹那目当ての上得意様には連絡したから、三蔵たち肉弾戦組の留守は、そこいらでフォローされている。ただし、閉店まで居座らせるのではなく、適当に早い時間に帰らせている。
「そろそろ、デートに行こうか? 」
 寺に帰り着いて、一息入れて親猫が切り出した。天候は安定したので体調も悪くない。
「ああ、どこか連れて行ってくれ。」
「とりあえず、パンダを見に行こう。あれ、珍しい動物だから、おまえもびっくりするぞ。」
「動物園か。」
「うん、かなり広いから一日仕事になるぜ。・・・確か、パンフレットが・・・」
 居間のチェストを、ごそごそと探して、パンフレットを取り出した。園内マップもついているので、ざっと様子は把握できる。
「刹那は、動物に触ったことはあるのか? 」
「・・・・・触るというより狩って食べていた。」
「・・・さいですか。」
「だが、大きいものは見たことがない。俺が居たところには、ネズミやトカゲ、蛇ぐらいしか生息していなかった。犬と猫は、特区で見たことはあるが・・・触ったことはない。」
 生まれてからサバイバル一筋な生活をしていた黒子猫にしてみれば、動物は食用だ。ペットなんて感覚はないらしい。まあ、内乱の国で、ペットなんてものはいないだろうとは、親猫も思うが、食用が、蛇だのトカゲだのネズミだのと言われると、ちょっと退く。
「じゃあ、ふれあい広場で小動物に触ってみようぜ。ティエリアは触れなくてさ。」
 紫子猫は、生きている動物に触れたことがなかったからなのか、怖がって逃げていた。狩っていたという刹那なら触れるだろうと、親猫はマップの場所を指差す。
「触るだけか? 」
「うん、触るだけ。小さくて可愛いから癒されると思うんだけどな。あとは、のんびり園内を一周して、他の大型動物を観察できるぞ。」
 マップには、動物のイラストも描かれている。サバイバル生活からテロリスト生活に移行しただけの刹那には、こういう楽しみはなかった。休暇の折に、親猫が一緒なら、買い物したり散歩ぐらいはしていたが、遊興施設まで出向くほどの時間の余裕はなかったからだ。
「パンダというのは、これか? 」
「ああ、それ。本物はかなりでかいぜ。」
「どれが大型動物なんだ? 」
「うーん、一番大きいのはゾウだろうな。あと、キリン、虎、ライオン、サイ、カバと・・・こんなもんかな。」
 マップのイラストをひとつずつ指し示して、親猫が説明してくれる。知識として、動物の種類もある程度は把握しているが、実際の大きさは判らない。
「ナイトサファリっていうのもやってるから、これもいいかもな。」
「ニール、何時間、動物園に滞在するつもりだ? あんたが疲れるほどの時間はダメだ。」
 この親猫、昨今、漢方薬治療なるもので少し体調は良いらしいが、それでも何時間もの外出は不安だ。半日ぐらいで帰らないと翌日、ダウンすることになる。
「これぐらいなら大丈夫だ。昼前に出て、動物園で食事して、夕方、少しナイトサファリも見て来よう。なんなら、晩飯も動物園で食べてもいいな。何箇所かレストランがある。」
 ナイトサファリというのは、夜行性の動物が観察できる夜の動物園だ。併設されているので、そういう予定で出向くのが普通らしい。ティエリアの時は夏だったから、そんなこと、許可できるか、と、ハイネに止められたから、ニールも行っていない。ちょっと夜の動物園なるものには興味がある。
「ドクターに確認して、許可が出たら両方行く。だが、ダメなら、どちらかに絞れ。」
 どう考えても、そんなに散策できるとは、刹那は思えない。園内一周が三時間だというのだから、徒歩三時間をこなして、さらに、徒歩二時間の夜の動物園となると、合計五時間歩く計算だ。どう考えても無理があるだろう。
「じゃあ、日を変えて、どちらも行こう。それならいいだろ? 俺、ナイトサファリって見てみたいんだ。」
「連日でなければいい。」
「わかった。後は遊園地とか植物園とか水族館あたりかな。」
 どれだけ出歩くつもりだ? と、親猫の発言に、黒子猫は威嚇するように、親猫を睨んだ。三蔵たちが戻って来るのが十日後辺りだ。寺の人間が戻ったら、刹那は放浪の旅を再会するつもりだから、時間としては十日しかない。その間に、そんなに回れるとは思えない。
「今回は、動物園と、あとひとつぐらいだ。それ以上は、俺が拒否する。」
「えーーせっかくなんだから、遊ぼうぜ? 刹那。」
「ダメだ。あんた、そんなに出かけたら、確実にダウンするだろうがっっ。動物園二回と、あとひとつだ。」
「おまえさん、なんでそんなに心配性なんだよ。もうすっかり良いって言ってるのに。」
「これ以上に文句を言うなら、動物園も拒否するぞ、ニール。」
「ちぇっっ、わかったよ。」
作品名:こらぼでほすと 闖入8 作家名:篠義