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こらぼでほすと 闖入8

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 どっちが保護者なのかわからない会話に、ふたりして笑い出した。どっちもわかっているのだ。せっかくだから、存分に遊ばせてやりたい親猫と、そんな親猫に感謝しつつも体調を考慮して拒絶する黒子猫も、どっちも互いの考えていることは理解している。




 今回は二人で、と、ニールが主張したので年少組も遠慮した。ただし、一般の交通機関を利用するというので、それだけは止めた。刹那に、往復タクシーを使え、と、アスランが、その辺りを説明する。刹那のほうも、そのほうが安全策だと判断したので、そうすることにした。この際、もったいない、というのは忘れていただくつもりだ。いつもならアッシーを強引に買って出るハイネが留守だし、ウィークデーとなると、年少組も学校がある。それに、せっかくなら、たまには親子猫で楽しんでくればいい。
 ウィークデーの動物園は空いている。前回も、そうだった。適度に客はいるが混み合っていないから開放感がある。まあ、散策コースをぐるっと廻ればいいだろうと、その順路を歩き出す。
 まずは、パンダだ。今回は、季節が違うからなのか、三匹のパンダはドッタンバッタンと走り回っていた。ぐぉっなどと鳴いて、じゃれあっているのが迫力満点だ。
「本当に大きいな。それに、この毛並みは不思議だ。」
 刹那も、その大熊猫の様子には驚いた。模様も変っているが、何より大型の熊なんてものは見たこともなかったからだ。
「だろ? 夏は昼寝ばっかしてたけど涼しいと活発なんだな。」
 大きな樹木のある場所を右往左往しているので、見ているほうも退屈しない。しばらく、観察棟のベンチに座って鑑賞した。なんとなく、この大熊猫を見ていると、ニールはアレハレルヤを思い出す。元気にしているかな、と、考えてしまう。
「悟空の田舎には大量にいるらしいぜ。」
「ああ、それは聞いたことがある。・・・・あいつ、こんなものと遊んでるのか? 」
 悟空が言うには、結構、凶暴だから遊び相手にはちょうどいいらしい。まあ、悟空のパワーなら、このくらいの獣でも押さえ込めるのだろう。
「さあて、そろそろ移動しようぜ。ん? 次はホッキョクグマだってさ。あ、その前に、アライグマか。」
 マップを確認しつつニールが立ち上がる。ここいらは、熊のエリアであるらしい。刹那も立ち上がって、後に続く。生きている動物は、じっくり観察したことがないから、興味津々ではある。
 そして、途中で、ニールは、ふと気付いた。草食動物のエリアでは、近寄ると避けるように離れていっていた動物たちだが、肉食獣のエリアでは態度が違う。なんていうか、近寄ってくる。それも威嚇するような動きで睨んでくるのだ。

・・・・なんで?・・・・

 もちろんマジックミラーになっている観察棟では、変化はない。あちらは、こちらの存在に気付いていないからだ。狼のエリアで、日向ぼっこする集団を、刹那と一緒に池越しに眺めた瞬間に、すくっと立ち上がった。そして、ゆっくりと、こちらに近寄ってきて、じっと、こちらを睨んでいる。
 さらに、前回は姿も見れなかったマレー虎は、のっそりと池の前まで優雅に現れて、刹那を睨んでいる。ニールが、移動しても、その視線は刹那から動かないので、目標は刹那だ。
「綺麗だな。」
「絶滅危惧種だとよ。」
「あれは一頭しかいないんだろう。仲間と逢えることも稀なんだろうな。」
 そんな話をしながら、柵と池越しに眺めていたが、マレー虎は、ごぉっと声を出した。そして、毛づくろいを始める。
「あれは触ってみたい。」
「いや食われるよ。」
 ひょいと刹那が柵越しに手を伸ばしたら、マレー虎のほうは顔を上げた。そして咆哮する。威嚇しているのかと思ったが、睨んではいない。ただ、じっと刹那を見ているだけだ。猫科同士だからなのか、何かしら意思疎通できるのかもしれない。刹那も生まれてから、ほとんど野生に近い生き方をしていたから、そういう部分が動物にはわかるのだろうか、と、ニールは首を傾げる。
「おまえさん、仲間だと思われているのかもしれないな。」
「そうか。それは光栄だ。」
 くすっと刹那が笑うと、マレー虎はかりかりと後ろ足で頭を掻いた。そして、ふあーと大きく欠伸して、のっそりと林の中へ戻ってしまった。虎、ヒョウ、ライオンなど肉食獣の反応は、概ね、そういう感じだった。逆に、ゾウやキリンは思いっきり退かれるのには驚いた。
「刹那、おまえ、すごいな。」
「何がだ? 」
 そうやって、一番奥のふれあい広場まで辿り着いたら、笑うぐらいに小動物が逃亡した。刹那がいる場所から、一番遠い場所に固まっている。爬虫類は、無反応だったところをみると、哺乳類のみの反応だ。なぜ、こういう反応なのか、当人はわからないし、ニールにもわからない、刹那の中に内包されたものに反応しているのだが、まだ、それに当人すら気付いていなかったからだ。
 夕暮れ近くに、霊長類のエリアに辿り着いた。ここが最後のエリアで、池の上に建てられた東屋で休憩した。
 池に浮かんでいる小さな島に、小さなサルが何匹か住んでいて、綺麗な鳴き声を奏でていた。遠くには、オラウータンが高い木の上に張られたロープを仲間同士行き来しているのが見える。徒歩三時間コースではあるが、ひとつずつ丁寧に観察していたので半日なんて、あっという間に過ぎてしまった。小島のサルを観察しながら、「どうだった? 」 と、親猫が尋ねる。
「楽しかった。生きている動物というのはおもしろい。」
「おまえさんも触れなかったな? 」
 なぜか、うちの子猫たちには、小動物は不興だ。刹那の側には、近寄ってもくれなかった。
「あの虎なら触れる。」
「あははは・・・そうかもしれないな。まあ、寺の近所の猫ぐらいにしとけ。」
 さすがに、肉食獣というのは触るなんて無理な話だ。同じ猫なら、刹那にも触れるだろうと、親猫は微笑む。陽が傾いて、橙色に空が染まり始める。そろそろ閉園時間だろう。
「俺も、久しぶりに動物をじっくり観察できた。さて、帰ろうか。」
「ああ、ここなら、また来てもいい。」
「じゃあ、次回も、ここに来よう。」
 とはいうものの、それがいつなのかは不明だ。でも、約束はしておく。どんなことでも、心残りになれば帰ろうと思ってくれるだろうと親猫は思うからだ。




 翌日、キラとアスランがおやつ時に顔を出した。それほど無理はしていないから、親猫は、さくさくとおやつを用意している。その間に、キラは動物園の様子を刹那に尋ねていたが、次はナイトサファリだと言ったら、「行くっっ。」 と、キラキラと目を輝かせた。
「次は、僕も行く。何度か行ったけど、あれは楽しいんだ。」
「そうか。」
「それ、いつ行くの? 刹那。」
「明日か明後日ぐらいの予定だ。」
「じゃあ、明後日にして。土曜なら僕らも休みだし。」
 すでに行く気満々の大明神様が勝手に仕切っているが、台所で聞いている親猫のほうは、それもよかろうと容認の態勢だ。どうせなら、レイも連れて行ってやりたいと思っていたから、ついでに予定が空けられるなら参加させようと考えた。
「いいですか? ニール。」
作品名:こらぼでほすと 闖入8 作家名:篠義