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こらぼでほすと 闖入8

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 アスランは、一応、お伺いは立てる。黒子猫とふたりっきりで、のんびりしたいということなら現地では自由行動にすればいいか、と、こちらも考えている。
「ああ、構わないよ、アスラン。どうせなら、シンとレイの予定も聞いてやってくれるか? 」
「わかりました。今夜、店で聞いておきます。じゃあ、こちらで仕切りますね。」
 許可さえ降りれば、アスランも動く。ナイトサファリはキラのお気に入りスポットだ。何回も行っているから、刹那を案内もしてやれるし、隠れスポットもある。ここんところ、シンとレイは学校の都合で自宅から通学していて寺のほうは留守をしている。ニールが店の手伝いに出向けば、顔を合わせられるのだが、刹那が帰っているので、それも休んでいる。
「あのね、ごはんの時間に行くと、すごいものが見られるんだ。アスラン、ちゃんとスケジュール確認しておいてね。特に、虎とライオン。」
「わかってるよ、キラ。人数が多かったら、トラムを貸切にしよう。そのほうが身内だけで楽しいから。」
 園内を巡るトラムは、予約しておけば貸切もできる。そのほうが、五月蝿くても迷惑にならないし、会話も自重しなくていいから、そうするつもりだ。




 翌々日、シン、レイと、なぜか虎アイシャ夫婦、鷹マリュー夫婦も現れた。たまには、童心に返ったデートをしようということらしい。エントランスで待ち合わせて集合すると、アスランがマップを手渡して予定を説明する。動物たちのエサの時間に合わせて移動するので、まずは、そこからということになる。まだ日暮だから、軽く食事をして、そこから、タイムスケジュールに沿って移動する。最終的に、予約したトラムで園内を一周するので、その時間までは、フリーだ。キラたちと一緒に園内を散策してもいいし、ぶらぶらとしていてもいい。
「九時にトラム乗り場に集合です。そこまでは、ご自由に、虎さん、鷹さん。」
「アスラン、俺たちも、その動物のお食事イベントには行きたいから、離れないぞ。」
「まあ、途中でいなくなったら放置しておいてくれ。」
「そうよ、セッカク、刹那とイッショなのに行くワよ。」
「痴漢が出たら肘鉄で撃退するから、一緒に行きましょうね? 」
 大人たちも、せっかくなら珍しいイベントは楽しみたいので、同行するらしい。まあ、いいのだ。ここで迷子になっても困るようなのはいない。放置すればいいだけだ。


 レストランで食事して、アスランとキラの案内で、散策に出発したのだが、ニールは、うわぁーと、その道を見て唸った。足元に、フットライト程度の明かりがあるだけで、ほとんどが暗闇だ。
「こんなに暗いとは思わなかったな。」
 左目の視力だけしか使えないニールにとっては、これは、足元が怖い。動物のエリアに入れば、そこそこの夜行灯があるとのことだが、そこまで道を踏み外さずに歩くのは至難の業だ。
「刹那、右側のフォローを頼む。俺は、前からフォローする。」
 レイが、それに気付いて、刹那を右側に張り付かせた。そして、自分は前を歩いて段差の確認などをする。シンもレイと並んでいるが、こちらは動物の確認だ。
「あ、あれ、ちっちゃいけど、なんかいる。」
「それ、マメ鹿ちゃん。ちっちゃいけど、鹿。でも、顔は可愛くない。それなら、あっちに大きな鹿がいるよ。」
 キラは、勝手知ったるなんとやらで、そこいらのガイドのように説明している。動物のエサは順路通りに行なわれているので、時間さえチェックしておけば、スムーズに見られる。
 真っ暗な広い場所で、キラは停止した。その向うには、ガラス張りの観察棟がある。
「ここ、ヒョウがいるの。もう食べてるみたい。」
 速く速くと急かして、観察棟に入る。観察棟の中もほぼ暗闇だ。足元だけ明かりがある。そして、ガラスの向うには、生肉が吊るされていて、それを下から噛み付いているヒョウがいる。動物の腿一本だが、骨も噛み砕いているのか、三分の一はなくなっている。ガラスの向こうには、薄暗い青いライトがあるだけだが、ヒョウの姿は捉えられる。獰猛に肉を噛み千切る姿は、野生そのものだ。
「こりゃすごいな。」
「こういうシーンはナイトサファリでしか見られないわね。」
 一同も、それを驚きつつ眺める。がふがふと肉を食べているヒョウは、唸るように鳴いている。
「はーい、次、サーバルキャットのところへ行きまーす。」
 しばらくして、キラが声をかける。食べきるまで見ていては、ごはんの時間が終ってしまうので、そこそこで移動しないといけない。ぞろぞろと観察棟を出て歩き出した。
 そうやって、園内を二時間かけて散策した。途中で、フードコートもあるので休憩して、原生林の森らしく作られているエリアを歩いていると、ジャングルに迷い込んだような雰囲気だ。
「でも、もう少ししたら、ナイトサファリは春までお休みなんだよね。特区は寒いから、南の動物たちは暖房の入ったとこで過ごすんだ。」
「もう少し南の地方だと、フルシーズン開園しているんだが、ここでは無理みたいでさ。」
「じゃあ、檻に何ヶ月か入ってるってことっすか? キラさん。」
「ううん、狭くなるけど木も草も生えてる室内運動場みたいなところに入ってるよ。昼間は、動物園みたいに見られるんだ。」
 ジャングルみたいな場所をずんずんと進みながら、キラが説明する。もちろん、キラは、その冬のナイトサファリにも来ているし、付き合っているアスランも詳しい。
「キラ、ここにはマレー虎はいないのか? 」
「いるけど、徒歩エリアじゃなくて、トラムエリアのほうだね、刹那。」
 神経の細い動物たちは、こういう観察をされると弱るし、危険と見做されている動物は夜間の行動が不穏になるので、そういうものは、トラムからの観察ということになっている。
「好きなの? 」
「あれは友達になれそうな気がする。」
「悟空も、それ言ってた。可愛いって。」
 まあ、悟空は虎とも本山のほうで戦っているから、飼われている虎だと猫みたいな感覚になるらしい。
「可愛いのか? あれ。」
 虎が、その発言に呆れて声を出す。獰猛な生き物だというのに、悟空にかかるとそうなってしまう。斉天大聖様だとは、わかっちゃいるが、それでもおかしいので、虎がツッコミはする。
「僕も可愛いとは思うんだけど、僕には扱えないから、悟空が帰ってきたら、触りに行こうか? 刹那。」
「ああ、行きたい。」
「いやいやいやいやいやいや、おまえら、待て。あれは触れるもんじゃねぇーだろっっ。危ないからやめとけ。」
 刹那が、ニパッと珍しく笑顔になったのて、慌ててニールが止める。近寄って、がほっと噛まれたら、人間なんて即死する。
「大丈夫ですよ、ニール。悟空が手なずけてあるんで、ここの動物園のは大丈夫です。」
「はい? 」
「以前、悟空も触りたいって言ったので、許可を貰って触らせてもらったことがあるんです。あの虎、悟空と戦って負けたので、悟空は噛みません。」
 アスランが、そう言って笑うと、シンとレイも、はあ? と、素っ頓狂な声をあげた。戦うって、あれとか? というところからしてツッコミどころ満載だ。
作品名:こらぼでほすと 闖入8 作家名:篠義