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さくべーですよ!

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ベルゼブブ優一の逆襲



「優一様」
部屋の重厚なドアが少し開いていて、その近くにジイが立っている。
「なんだ」
ベルゼブブは上着をはおりながら言う。
「もうしばらくすると私は人間界に召喚される。用件は手短に伝えてくれ」
「これから優一様を召喚するのは、いつもの女性ですか?」
「……ああ、そうだ」
さっき佐隈から召喚を事前に知らせるメールが届いた。
だから、間違いない。
ふと、ジイが羽根を動かしてゆっくり飛んできた。
ベルゼブブよりも小さなジイだが、羽根を使って浮いているので、目線の高さが同じになる。
「優一様、ベルゼブブ家の家訓をご存じですか?」
「家訓?」
そのようなものがあっただろうか。記憶にない。
「はい、家訓です」
少し首をかしげたベルゼブブに、ジイは説明する。
「ベルゼブブ家の家訓は、右の頬を打たれたら」
「左の頬を差しだせ、か?」
「違います。右の頬を打たれたら、相手の左の頬を殴り飛ばし、その腹を踏みつけろ、です」
「……なかなか激しい家訓だな」
ちょっと退いてしまった。
「そういうことですので、優一様」
ジイが顔を近づけてくる。
「やられっぱなしではいけません」
「なんのことだ?」
「……優一様が、あの女ゆるさない、と何度も寝言を仰っていたのを、ジイは聞いております」
ベルゼブブはぎょっとした。
あの女とは、もちろん、佐隈のことだ。
夢を見たのだ。
佐隈にベルゼブブのプリチーボディをもてあそばれている夢を。
夢ではあるが、現実にあったことでもある。
「盗み聞きしていたのか」
「そんなことよりも」
ジイはベルゼブブの非難をあっさりとかわした。
「ベルゼブブ家の家訓に従ってください」
そうジイが告げた直後、ベルゼブブの頭上に魔法陣があらわれた。
召喚が始まる。
ジイがベルゼブブから離れていく。召喚に巻きこまれないようにするためだろう。
ベルゼブブは魔法陣のほうに飛ぶ。
魔法陣に吸い込まれる、ほんの少しまえ。
「優一様、逆襲を」
ジイの声が聞こえてきた。
しかし、それに対して返事をするどころかジイのほうを見る時間もなく、ベルゼブブは魔法陣に吸い込まれた。






作品名:さくべーですよ! 作家名:hujio