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さくべーですよ!

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手を移動させる。
ベルゼブブの身体の下にある、佐隈の身体、その胸のほうに片手をやった。
もちろん服は着ているが、女性らしいラインを描いているのを隠しきれてはいない。
ふくらみに触れる。
「ベ、ベルゼブブさん……!」
着ている半袖Tシャツの下には、まだ布のようなものがあるのを感じる。
夜に喚びだしたときとは違い、今はブラジャーをしているのだろう。
それでも、豊かな胸のやわらかさを感じる。
「やめてください……」
「ほう、妙ですね」
ベルゼブブは笑った。
そして、からかうように言う。
「いつもは、あなたのほうから私の身体に押しつけてくるのに」
「そんなこと、していません」
「していますよ。夜中に私を喚びだして、私の身体をぬいぐるみのように抱いて、その身体を押しつけてくるのではないですか」
「あれは……」
「あなたから見れば、私の姿が違う。ですが、私にしてみれば、どちらも私なんですよ」
佐隈の胸のふくらみを、一度、強くつかんだ。
その身体がビクッと震えたのを感じる。
今、佐隈はどんな表情をしているのだろうか。恥ずかしそうに顔を赤らめているのだろうか。
想像すると、そそられる。
しかし、今の目的はそれではない。
ベルゼブブは自分の中にわきあがってきた興奮を抑えつけた。
「これ以上のことをやめてほしいのなら、誓いなさい」
佐隈の胸をつかんだまま、告げる。
「もう二度と、私を夜中に喚びだして、私の身体をぬいぐるみのように抱いたり、抱いて一緒に寝たりしないと、誓いなさい」
自分は佐隈を簡単に組み伏せることもできる成人男性なのだ。
それがよくわかったはずだ。
だから、きっと、佐隈は提示された条件をのむ。
そうベルゼブブは思っていた。
だが、佐隈からの返事はない。
気になって、ベルゼブブは少し身体を起こした。
佐隈の顔を見る。
「!」
驚いた。
一瞬にして、頭の中のものがすべて吹っ飛んだ。
なにも考えられない。
ただ佐隈の顔をじっと見る。
メガネのレンズの向こうの眼は閉じられている。
その眼から、こぼれ落ちるものがある。
紅潮した肌をつたい、流れていくものがある。
透明なそれは光って見える。
涙、だ。
胸が、ドクンと鳴った。
心臓を強くつかまれた気がした。
痛みを感じた。
作品名:さくべーですよ! 作家名:hujio