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さくべーですよ!

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坊ちゃまのお相手



ベルゼブブは芥辺探偵事務所にいた。
事務所の窓の外は、黒色。
今は夜である。
「明日は魔界で用事があるので召喚はしないでください」
ベルゼブブはペンギンのようなプリチーボディをソファにちょこんと置いて、テーブルをはさんで向かいに座っている佐隈に言う。
「見合いをするんです」
「お見合い、ですか」
少し驚いたように、佐隈は眼を丸くした。
ベルゼブブはうなずく。
「はい。一族の者が、そろそろ身を固めたらどうかと、縁談を持ってきました」
そして、佐隈の様子をじっと観察する。
佐隈は驚いているようだが、ショックを受けているようではない。
「そうなんですか〜」
軽く相づちを打つと、少し身を乗りだしてきた。
「相手は、どんな方なんですか?」
その様子から感じるのは、純粋な好奇心だ。
「……遠縁の者です」
ちょっと間を置いてから、ベルゼブブは答えた。
頭に、見合いを勧めてきた者から聞いた相手についての情報を、よみがえらせる。
「私と同じ獄立大卒であるそうです」
「へえ、じゃあ、賢い方なんですね」
「そのようです」
しかし、相手の顔は頭に浮かんでこなかった。
きちんとした感じの二つ折りの台紙の内側に貼られた写真を見たが、チラッと眼をやった程度で台紙を閉じたので、記憶に残っていない。
「わかりました」
あっさりと佐隈は言う。
「明日はベルゼブブさんを召喚しないようにしますね」
「……そうしてください」
ベルゼブブは堅い声で返事をすると、ソファからおりた。
「私は魔界に帰ります」
「はい。それでは、また明日……、あ、そうじゃなかったですね」
しまったという表情になり、佐隈は訂正する。
「また、明後日以降に」
その表情は明るい。
ベルゼブブは無言でうなずいて見せると、佐隈から眼をそらした。
作品名:さくべーですよ! 作家名:hujio