さくべーですよ!
「ほんなら、ワシも帰るわ〜」
アザゼルがそう言って、ベルゼブブのほうに近づいてきた。
そのあと、ベルゼブブはアザゼルとともに佐隈のいる部屋を出て、魔法陣の描かれている部屋へと向かった。
魔界に帰ってきた。
ベルゼブブの姿は本来のものにもどっている。
もちろん、隣にいるアザゼルもそうだ。
「では、アザゼル君、今日はこれで」
そう別れの挨拶をして、ベルゼブブは城のある方角に飛んでいこうとした。
だが。
「ちょっと待ちィや、べーやん」
アザゼルに呼び止められた。
だから、ベルゼブブはアザゼルのほうを向く。
「なんですか」
「べーやん、さっき、気落ちしてたやろ?」
「はあ? なんの話ですか」
「さくに見合いの話をしたときのことや。べーやんが、明日、見合いするってゆーたのに、さくはぜんぜん平気そうやったから、べーやん、ガッカリしたんとちゃうん?」
にやあ、とアザゼルはいやらしく笑った
ベルゼブブは眉根を寄せて、不快感を表に出す。
「別にガッカリなんてしてませんよ」
ツンとした態度で素っ気なく言った。
けれども。
「いーや、そんなことあらへんかったでェ」
アザゼルは打ち消した。
「ワシは近くで見とったけど、べーやん、沈んでたやんか。さくは鈍感やさかい、気ィついとらんかったけどな」
「アザゼル君の見間違いです」
「強がらんでもええやん。認めたらええやんか」
「なにを認めろ、と」
「せやから〜、べーやんは、さくに見合いの話をして、さくに慌ててほしかったんやろ?」
「なぜ私がそんなことを望むんですか」
「そんなん決まってるやん」
アザゼルは妙に嬉しげな顔をして、陽気な声で告げる。
「べーやんが、さくのこと、好きやからや」
「はァ!?」
ベルゼブブは思いっきり顔をゆがめた。