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座敷童子の静雄君 1

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だってこんな忌まわしい怪力やチビだってのをひっくるめて、明らかに怪しい静雄の事を、切実に必要としてくれる少女がここにいるのだ。
じんわりこみ上げる嬉しさを静雄はしみじみ噛み締め、彼だって幸せな気分に浸り、そのまま帝人の胸に顔を埋めた。


明日の死闘に備えて、たっぷり睡眠を取らなければならなかったのだ。
『断じてエロい気分なんかじゃねぇからな、しっかり覚えとけ!!』と、誰に宣言する訳でもないのに、何度も頭の中で言い聞かせて。



なのにその運命の朝。


昨夜風呂に入り損ね、静雄はシャワー浴びてぇなと思いつつ、洗面所で顔を洗っていた。
帝人は隣の台所で朝食の支度中で、お味噌汁だと思うが、漂ってきた良い匂いが鼻を擽り、腹もぐぐーっと催促の音を鳴らしやがる。
まともな和食の朝飯なんて、両親が池袋から成人した静雄を置いて、田舎に引越ししていっちまって以来かもしれねぇ。
となると三年ぶりか♪

「しずおくーん、もう直ぐ朝ごはんですよぉ♪」
「いま、いくー!!」

石鹸を水でばしゃばしゃと洗い流し、目を瞑ったままタオルを捜す。
そしたら指が触れたのは、何か硬いものだった。
その途端、体がぐいっと引っ張られて。
慌てて目を開ければ、あの夜と同じように胸のサファイア石が白く光り輝いていた。

(やべぇ、おい、なんなんだこりゃ!?)
「や……み、……みかろ……」
手当たりしだい、そこら辺にあるものを引っ掴んだが駄目だった。
焦った静雄は抵抗一つできないまま、意識がすうっと急下降し、ブラックアウトした。


☆★☆★☆


「……げぼっ、ごほっ、ごほっ………」
鼻にお湯がモロに入って痛ぇ。
気がついた時、彼は自宅の風呂の中で溺れていた。

(みっともねぇ、こんな所で溺死なんてしたら最後、ノミ蟲野郎に一生馬鹿にされちまう)

濡れた髪を掻きあげ、風呂釜の淵に顎を乗せ、ぼんやり考える。
(今のって、もしかして俺、寝ぼけていただけなんじゃねーの?)
この現代で『竜の呪い』に『座敷童子』に『生贄の姫』なんて。
そのまま大人版『残酷日本昔話』に使えそうなネタが満載だ。

静雄がもしセルティ……妖精デュラハンを親友に持っていなければ、きっと夢想だと笑って終っただろう。
だが、人差し指の先端には、慎ましくピカチュウ模様の絆創膏が張り付いていて。
しつこくガン見したが、それは明らかに静雄が自分から巻く筈がないものだった。
「……夢じゃねぇ……」
てことは?

直ぐに胸にぶら下がってる蒼いペンダントを引っ掴めば、途端≪しずおくん? しずおくん?ねぇどこですか、童子さまぁ?≫と、呼んでくれる優しい声が聞こえてくる。

ざぁぁぁぁぁぁと、彼の顔から本当に血の気が引き、真っ青になった。

「なぁ、今一体何が起こったんだよ? おい、石……、俺をとっとと帝人の所に連れて行きやがれ!!」
握っても振り回しても水に漬けても、蒼い石は全く輝かなかった。

やばいやばいやばい!!
(だって俺が行かなければ、帝人はどうなる? あいつ、死んじまう!! 今日喰い殺されちまうのに!!)



「おいばばぁ、俺をとっととそっちの世界に呼び戻せ。聞こえてんだろ、早くしやがれ!! ばばぁ、ばばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

どんなに叫び脅したとしても、静雄を弾き出しやがった世界は、彼を運んではくれなかった。



作品名:座敷童子の静雄君 1 作家名:みかる