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こらぼでほすと 闖入9

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 おそらくは、今度の連合は早期に崩壊する。だから、次に世界が纏まるまでは、オーヴは身を引いている予定だ。余計な戦火に巻き込まれないのも、国家を存続させる術だ。まだ、カガリでは、そこまでできないから、ウヅミーズラブが陰で支えている。トダカがキラの側に居座っているのは、そのためでもある。キラが姉であるカガリを護りやすいようにサポートするため、オーヴの動向や予定を知らせる必要があるからだ。キラが思うようにしてもらっては、オーヴとしては困ることもあるから、その調整もしている。ウヅミーズラブ一桁会員は伊達ではない。一桁会員というのは、ほとんどがウヅミの側近だった人間ばかりだ。だから、その向かうつもりだったところも理念も深く理解している。それは、カガリにも受け継がれているから、その歩みを進める為に動いている。
 いろいろと小難しい話は、二時間近く続いた。ようやく報告やら意見交換が終ったのは、予定の二時間を過ぎていた。
「長居させてしまったな、すまない。」
「とんでもありません。予定オーバーなのは、トダカさんのほうでしょう。ほら、娘さんとお孫さんが、あちらに? 」
 その温室の外にあるエントランスのベンチに、親子猫が座っている。予定通りに戻って来てくれたらしい。
「ああ、本当だ。ここは食事するところがないから、一端、外へ食事に行こうと予定していたんだ。」
 植物園には付属のレストランなんてものがない。だから、食事するには、外へ一端出るしかない。半券さえあれば、出入りは自由なので、トダカは、そのつもりで店を予約していた。
「では、どうぞ、先に出てください。お疲れ様です。」
「ありがとう、きみもお疲れ様。気をつけて。」
 握手すると、トダカーズラブを引き連れたトダカが温室を後にする。小走りにエントランスへ向かって手を振っている。それに、振り向いた親子猫も立ち上がった。


 上司様たちと坊主、サル、イノブタ、エロガッパの混合ご一行様は、のんびりと夕刻に帰って来た。沙・猪家夫夫は、そのまま自宅へ引き上げたが、残りは寺へ戻る。
「おかえりなさい。」
 寺では、きちんと女房が食事の用意をして待っていた。もちろん、黒子猫もへばりついている。まあ、ゆっくりしてください、と、着替えの用意もして風呂の準備もされている。さくさくと坊主が風呂に消えようとしたが、童子様に先に入られてしまった。
「ただいまぁー。あ、みやげ、はい。残りは明日、届く。」
 悟空が基本のお土産をママに手渡す。最終日は、お土産探しに明け暮れた。店の分は大量になるから宅急便で送った。だから、手渡したのは京都銘菓の「おたべ」が三箱ばかりだ。
「ふーん、こういうのが名物なのか。」
「目に付いたのは、これが多かった。他にもいろいろと買ってきたぜ。刹那、明日、一緒に食べような? 」
「ああ。」
 悟空は刹那に、お菓子や漬物についての説明をし始める。あちらの関係者は、ちゃんと漬物と酒を帰り際に届けてくれた。それは冷蔵庫に仕舞ってある。
「お疲れ様でした。今日は早めに休まれますか? 捲簾さん、天蓬さん。」
「いや、疲れてないぜ、俺らは。」
「そうですね。なかなか楽しい旅行でしたよ、ニール。次回はお誘いしますから。」
「いえ、俺は結構です。」
「まあ、そうおっしゃらずに。あなたの亭主が手持ち無沙汰にしてましたからね。やっぱり寂しいんじゃないですか? 」
「三蔵さんが? あはははは・・・それはないですよ。五月蝿いのがいなくて、清々してたんじゃないですか? ねぇ? 三蔵さん。」
 寺の女房が、そう言うと、ふんっと寺の亭主は鼻白んだように睨む。どっちともとれる態度だ。
「ほら、寂しかったんですよ。ねえ? 三蔵。」
「けっっ。」
 ここにいると弄られるので、坊主は夜のお勤めをするために立ち上がる。それを見て、ニールはお土産の箱をひとつ持ち上げて出て行った。その後を、黒子猫も追い駆ける。
「あれ? 」
「なんで、ニールまで逃げたんだ? 」
「逃げてねぇーよ。三蔵に陰膳送ってもらうつもりなんだ。」
 現在、行き方知れずのオレンジ子猫に、珍しいお菓子の念だけでも送ってもらおうと本堂へ行ったんだ、と、悟空が説明する。何かしら珍しいものや、オレンジ子猫のために作るものは、ああ、やって陰膳として坊主に念だけ送ってもらっているのだ。
「三蔵は、それも承知の上で、お勤めですか? 悟空。」
「うん、知ってる。あれ、教えたの、三蔵だかんな。」
 明日になれば、いろいろと届くが、とりあえず、と、ニールも思ったのだろう。そして、坊主は、ちゃんと女房のために貰ってきた酒も持って行ったのは、誰も気付かなかった。


「すいません、三蔵さん。これ、送ってやってください。」
 本堂についてきたニールが土産の箱を、祭壇に置く。それを確認してから、坊主も小瓶を同じように置いた。まずは、仏様にお経を唱える。その間は、親子猫は、ちんまりと正座している。次に、別のお経を唱えて、「食い合わせ悪いのは、おまえらの日頃の行いだ。」 と、最後に〆て振り向いた。
「終ったぞ。」
 なんとなく、これをやってもらうと、ニールもほっとする。念だけしか送れないが、それでも何も無いよりマシだ。それに、少しでもアレハレルヤたちが無事でいられそうな気がするのだ。
「これ、おまえへの土産だ。他のヤツには飲ませるな。」
 祭壇に供えた小瓶を、女房に渡す。それから、土産の箱は黒子猫に渡して、先に戻れと命じる。黒子猫も親猫の亭主の命令には従順で、すたこらと、あちらに戻った。その後から、寺の夫婦も本堂から出る。
「これ、酒ですか?」
「量があんまりねぇーいい酒だ。おまえの寝酒にしろ。」
「それなら、あんたが飲めばいいでしょう。俺なんかにゃ勿体無い。」
「バカ言うな。俺が飲んだら一気で終る。おまえなら、ちまちま飲むから、しばらく保つだろーが。ちびにもやるな。あいつには勿体無い。」
 ラベルも何も無い小瓶だ。市販のものではないらしい。土産に寝酒って・・と、女房は肩を震わせている。
「もう、しばらく、あいつらは滞在するからな。」
「はいはい、ちゃんとお世話させていただきます。」
「変ったことはなかったか? 」
「これといってはありません。ああ、檀家さんからお参りの予約が二件入ってます。受けてありますよ。」
「後で見る。他は? 」
「のんびりさせてもらいました。旅行は楽しかったですか? 」
「まあまあだろうな。悟空が大喜びだった。」
「それはよかった。・・・・あんたも一人じゃないですね。肉親じゃないけど、あの方たちとは繋がってる。」
 三蔵には肉親がない、というのは聞いていた。だが、あの上司様ご一行は、身内みたいなものらしい。気遣いも何もしていないし、悟空との繋がりみたいなものが、あの上司様たちともあるのは、ニールにはわかった。そうでないなら、もっと疲れた顔をして帰ってくるだろう。満足した顔というか楽しかったというか、そういう表情で、寺の亭主は帰ってきたからだ。お互い、そういう表情も、なんとなく判るようになっている。
作品名:こらぼでほすと 闖入9 作家名:篠義