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こらぼでほすと 闖入9

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「どうもしねぇー。うちに置いておける状態なら置いておくし、ダメなら歌姫が保護する。てか、壊れるようなことがあったら、あいつ、おかしくなるだけじゃ済まないだろうな。」
 黒子猫がいなくなったら、親猫もいなくなるだろう。それは仕方の無いことだ、と、坊主も諦めている。約束したことは撤回させられない。自分だって、悟空と約束している。それを覆せるのは、当人たちだけだ。だから、それは、自分がどうこうすることではないし、こちらが、そうなっても女房は手は出さないだろう。どちらも、その約束が一番大切で護りたいことだからだ。
「冷たいんじゃないか。」
「おまえだって、サルのことで、もう一度戦うことになったら、俺らのことなんて放置するんじゃねぇーのか? 」
「というか、サルの保護を頼むだろうな。」
「俺らが参加したいって言ってもさせねぇーんだろ? 」
「当たり前だ。おまえらまで参戦させたら、悟空は、また一人になるだろうが。」
「そういうことだ。だから、俺もあいつは引き止めねぇーし、あいつも俺を引き止めねぇー。それは端から承知の上だ。」
「なんだ? その信頼関係は。」
「夫夫なんだから当たり前だ。」
「・・・・おまえらも・・・いちゃこらと・・・俺は居場所がねぇーな。」
「ああ? うちはいちゃこらなんてしてねぇーだろーが。どっかのバカップルみたいに言うんじゃねぇよ、金蝉。」
 いや十分にいちゃこらしてるだろう、と、童子様は思う。そんなことをちゃんと話しているだけでも、確固とした繋がりが確立していることを意味しているからだ。友情越えてるだろーが、と、反論しようとしたら、庭から親子猫が戻って来た。
「お茶入れましょうか? 」
「おう。」
 もちろん、銘柄なんぞ言うわけでもないの、ほうじ茶が用意されて置かれる。茶菓子も出されているが、マヨネーズ味の煎餅だったりする。
「ちび、いつ出かけるんだ? 」
「虎を見たら出る。」
「それ、土曜ぐらいだと思うぞ。」
 ウィークデーは、さすがに悟空も出張れないから、休みの日に予定されている。後三日ということだ。
「本当に大丈夫なんですか? 虎って猛獣なのに・・・悟空も大丈夫だって言いますが・・・」
「あの虎なら問題はねぇーだろう。サルが一度、叩き伏せてある。」
「でも、刹那は悟空ほどに腕力あるわけじゃないんですよ? 」
「ちびだけで触らせたりしねぇーだろう。心配性すぎるぞ、おまえ。」
「普通、心配しますよ。」
「うちに普通のヤツなんかいねぇーのに、何を常識人ぶってやがる。」
「ほんと、大丈夫なんですね? 三蔵さん。」
「大丈夫だ。それより、昼から出かけるぞ。」
「はいはい、早めに用意します。」
「ちび、おまえも社会見学についてくるか? 」
 と、坊主は黒子猫も誘ったのだが、「おかんと一緒にいる。」と、きっちり断られた。何がなんでも離れたくないらしい。
「刹那、俺、昼寝するから三蔵さんたちと出かけて来いよ。」
「ダメだ。俺が監視する。」
 刹那は、この二週間は、ほとんどニールから離れない。最初に雨で具合が悪かったこともあるが、久しぶりに二人っきりを堪能していたから、寺の人間が帰ってきたら余計に離れたくなくなったらしい。
「この利かん坊は・・・ダメみたいです。」
「まあいい。留守番させとけ。」
「金蝉さんも行かれるんですか? 」
「ああ、付き合えと言われてる。」
「三蔵さん、聖職者の方って、ギャンブルはマズイんじゃないですかね。」
「・・・・おまえ、俺をなんだと思ってる? 」
「あんたは破戒僧なんでしょ? 金蝉さんは、どう見ても、そうは見えないから尋ねたんですが? 」
「こいつは、俺より性質の悪い破戒者だ。」
「そうですか。なら楽しんできてください。」
 じゃあ、もう少し外のことをしてます、と、親子猫は休憩すると、また外へ出て行った。坊主の一言で納得されてしまった童子様は、ちょっと凹む。もうちょっと反論してくれるとか、違う理由を考えてくれるとか、そういうものは寺の夫夫に求めたいと思う。
「破戒者とは、あんまりだな? 三蔵。」
「間違ってないだろ。神仙界の上位神に喧嘩吹っかけてるのは、そう呼んで間違いじゃねぇぞ。」
「そりゃそうかもしれんが・・・俺は、おまえよりはマシなつもりなんで同列は悲しい気分だ。」
「けっっ、どこがマシなんだ、どこが。おら、サインするのがなくなったぞ。次をやれ。」
 どこといわれると童子様も反論が思い浮かばない。マシだとは思うのだが、それが生活環境によるものばかりしか思いつかなかったからだ。




 坊主とサルが出勤する頃に、捲簾と天蓬が戻って来た。今日は外泊だろうと思っていたら、何やら大荷物だ。
「明日のメシは、俺にやらせてくれないか? ニール。ちょっと里心がついたんで、いつものメシが食いたくなったんだ。」
 大荷物は、チャイナタウンで仕入れてきたらしい野菜やらの食材だった。特区の西でも、ほとんどが和食だったし、寺でもメインは和食だ。だから、少しいつもの味に餓えた天蓬からのリクエストだった。
「俺も手伝わせてもらっていいですか? 」
「ああ、頼む。悟空、明日はおやつも豪勢なの作ってやるから、店のガキどもも呼び出しかけとけ。」
「オッケー。おやつは食いに来るように言っとく。・・・天蓬、土産届いたぞ。俺のは抜いたから、後は天蓬のとこのだ。」
「早かったですね。」
 ちゃんと、あちらから出した荷物は届いた。洗濯物も大量に配達されたが、土産もたくさんあった。悟空は、あちらのお菓子を大量に仕入れて、店へ運んで配るつもりだった。大きな箱をひょいと担いで、悟空は三蔵と出て行く。そして、畳の上に置かれたものが天蓬が買ったものだ。
「これですね。ニール、お土産です。」
 はい、と、渡されたのは、ぐにゃりとしたもので、なんだろう、と、ニールが紙を破くと、えらく煌びやかなものが出てきた。外国人が土産として買う着物の簡易版のようなものだ。
「ナイトガウンとして使うものだそうです。これで、三蔵を悩殺してください。」
「はい? 」
「だから、素肌に、これを纏ってベッドに押しかければ、いかな朴念仁でも反応
してくれるのではないかと。」
「・・・・天蓬さん、俺、撃ち殺されると思いますよ? そういう冗談は嫌いみたいですから。」
「おや、ご自分の魅力に自信が無いんですか? ニール。大丈夫です。人妻としての魅力は充分に滲み出てます。」
「・・・・・ないです。」
 どこをどう見たら、そういう意見が出てくるのだろうと、ニールは首を傾げる。身長180オーバーの男に、そういう色気なんてものはないだろう。
「天蓬、そんなダイレクトアタックしたって、三蔵は反応しねぇーんじゃないか? ・・・・それは軽い冗談だ。ナイトガウンとして使うのは本当だから、使ってくれ。」
「はい、ありがとうございます。」
作品名:こらぼでほすと 闖入9 作家名:篠義