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Our Song

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 ぶつけ所のないモヤモヤに水谷はまた二年の教室でクレープを買った。どうも顔を覚えられていたらしく、「二度目だし生クリーム大盛りサービス!」と言われたそのクレープはずっしりと重かった。
 そんなものを持って野球部のポップコーン屋へ行ったら花井と阿部からドン引きされてしまった。まず二人にとっては男がクレープなどを食べるのが信じられないらしい。
「水谷恥ずかしくないわけ?」
「べ、別に考えたことないけど……」
 文化が違うな、と花井と阿部は頷いた。クレープを食っているだけでそんなことを言われるとは思ってもみなかった。
 しかし後から来た泉にまで「げっ」と眉をひそめられたから、水谷は少しカチンときてしまった。好きなものぐらい好きに食わせて欲しい。
 ともかく先にいた二人と交代し、水谷と泉はポップコーンを売ることになった。
「七組のアレなんなの」
 そう泉から尋ねられたが、ちょうどお客が列を作っているときで水谷は質問に答えられなかった。しばらく黙々と小銭とポップコーンを交換し、「ありがとうございました」と声を出していた。
「オレもよくわかんないよ」
 混雑が少し和らいだら、ようやくそう返した。泉は少し考え込んだあと、水谷の発言が、さっきした質問に対してのものだと理解し、「ああ」と言った。
「浜田が二回も頼まれててよ」
「二百円なりまーす」
「超浮かれてて見てらんないつうか」
「あざーっす!」
「オレには浜田のどこがいいかなんてわからん」
「泉んとこには来た?」
「来るわけないだろボケ!」
 軽く膝蹴りを食らった。よっぽど悔しいようだ。
「じゃあ水谷は来たのかよ」
「無いっすね」
「だよな」
 泉はスコップのようなもので器用にポップコーンをすくい取り、大きめの紙コップへ詰めてそう言った。納得されてもなんだかむかつく。

作品名:Our Song 作家名:さはら