二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Our Song

INDEX|31ページ/38ページ|

次のページ前のページ
 


 いつもの倍以上の人がいる校内はとても動きづらくて時々足がもつれる。
 今まで何をのん気に構えていたんだろう。もしかしたら写メを頼んだ子は栄口が思いを寄せている子で、実は二人は両思いなのかもしれない。そんな事態を予測していなかったわけじゃないけれど、いざ目の当たりにしたらどうしようもなく我慢できなかった。
 写真なんて撮られないで。誰かのものにならないで。
 そう思うことがひどく身勝手だと水谷は知っている。もちろん今栄口を探すことですら、何の意味も持たないとわかっていた。どんなに足掻いても、どんなに声を張り上げても、好意を持ち合っている二人の前では無力だ。『関係ない』のだ。
 しかし、やだやだやだ、と心の中に響く声だけが水谷を突き動かす。その短い単語ばかりずっと繰り返している自分は駄々を捏ねる子供みたいで、とてもみっともない気がした。
 でも水谷にはそういう幼さしか原動力がなかった。冷静になればより良いな解決案が出てくるかもしれないのに、すべてを拒み、即時に跡形も無く壊さないと気が済まない。だから水谷は闇雲に栄口を探す。
 オレは子供だ。格好つけて背伸びしているけれど、どこにでもいる普通の高校生で、十五年しか生きてないただの子供だ。頭も回らないし、こんなときどうするのがいいのかなんてわからない。だからできることは当たって砕けてみることしか考えられない。
 水谷は校内にいる知り合いという知り合いすべてに栄口のことを聞いた。一組の男子は「ずっと見てない」と言い、食堂でうどんを食っていた花井と阿部は「朝会ったきり」と答えた。
 二年の教室を見て回っているとき偶然さっきの女子生徒に会い、「栄口くんいた?」と聞かれたから、おそらくまだ写真は撮られていないんだろう。暗幕に覆われている体育館は劇を見る人であふれていたが、注意深く見たけれどその姿はなかった。ここならもしや、と思った職員室にも保健室にもトイレにもいない。まさかもう帰ったとしても、それには理由が足りない。
 たくさんの人とぶつかって、そのたびに「ごめんなさい」と謝った。喉へ入ってくる息が痛い。髪の生え際に少し汗をかいているような気がする。ふと歩みを止めてみると、足の裏がひどく熱を持っていることを知る。けれでも、一番先に栄口を見つけ出すのは自分だ、というおかしな意地を捨てることができず、水谷はまた走り出す。

作品名:Our Song 作家名:さはら