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こらぼでほすと 闖入10

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「表立ってだけでもなくなればいいと、僕は思ってるよ。誰かの正義を押し付けられるのはイヤだからね。」
「そうですね。それぐらいなら、なんとかなるかもしれません。」
 キラだって、世界が平和になるのは難しいと思っている。ただ平穏にするぐらいなら、と、考えいるだけだ。それも、ひとりでは難しいから、周囲だけでも、と、願っている。
 アスランが二本の木刀と救急箱を運んできた。あっちこっちに傷があるので手当てだけしておけ、ということらしい。
「ニールが心配するから目立たないようにしておけ。」
「了解した。」
 それを渡すと、じゃあ、稽古をお願いします、と、天蓬に一本を渡す。そして、見物に準備の終わった捲簾と爾燕がやってくる。すでにビール片手だ。
「僕にはないんですか? 」
「一口やるよ。」
 ほれ、と、手にしていた缶ビールを女房に渡す。ぐびぐびと女房は、それを飲み干した。それぐらい、炭酸ジュースのノリだ。そして、山門から入ってきた紅も合流するし、遅れて坊主と童子様も現れる。
「軽く流しますよ? アスランくん。」
「お願いします。」
 刹那と違って、アスランは正統派の戦い方だ。軍人らしいきびきびとした動きで突きを出す。
「腕は、そこそこですね。」
「やってないわけではありませんから。」
 真剣は使わないが、棒術や剣術というのはカリキュラムにもある。だから、それなりには動ける。
「なんの騒ぎかと思ったら。」
「おまえもやるか? 紅。」
「はあ? 本気か? 爾燕。天蓬とやるなら、俺は召還術も使わないと死ぬぞ。」
 こんなところで召還術を繰り出したら騒ぎになる。それはまずいだろうと、紅は笑う。かなり手は抜いているが、それでも天蓬は強い。普段は、天界軍の指揮をする立場だから実戦には参加しないが、捲簾と遜色ない動きだ。
「いや、たまには身体を動かしたほうがいいかと思ったんだ。」
「まあ、そりゃそうだけどな。」
 そう会話していたら、見事に小手を決められて、アスランが木刀を落とした。それを拾い上げて、こちらに振り向いた元帥様は、ニャッと笑って紅に視線を固定する。
「そこの王子様、僕と手合わせしてくださいよ? よもや、お断りになりませんよね? 」
「望むところだ。」
 ヤバイヤバイと言っていた紅も指名されたら、出張らないわけにもいかない。ここんところ、こういう鍛錬はやっていないが、天界軍の元帥様とは手合わせしてみたい誘惑には勝てない。
「バイトがあるから、顔はやめてくれ。」
「もちろんです。でも、本気で行きますよー。」
 構えた元帥様は楽しそうだ。ありゃありゃ、と、爾燕と捲簾は苦笑している。悟空にいろいろと危害を加えた過去があるので、仕返しも兼ねていたらしい。
「しまった。忘れてたな。」
「すまんな、爾燕。うちのは、記憶力がいいんだ。」
「まあいいさ。ここんところ、平和ボケしてるから、目を覚ますにゃちょうどいいだろう。」
「覚ます用事ができたかよ? 」
「いや、まだだが、たまに覚ましておかんとな。」
 カンッッと乾いた音で打ち合わされる木刀は、壊れそうな勢いだ。どちらも力を載せているから半端な打ち込みではない。避難したアスランとキラも、おーと唸るほどの迫力だ。紅のほうが押されているが、負けん気の強い紅も退くばかりでない。軽く土塀の上に飛び去り、そこから打ち込んでくる。ついつい気合が入って、うおぉぉぉっっと叫んだら、鼻先を掠めるように銃弾が通り過ぎた。
「五月蝿いっっ。黙ってやれ。」
 掠った銃弾は土塀に吸収されているが、それにしても凄い腕だ。動いている紅の鼻先ギリギリを飛んでいる。
「三蔵、邪魔すんな。」
「叫ばないならかまわねぇーぞ。うちのが起きるだろうがっっ。」
 おまえも叫んでるだろうが、と、ツッコミしようとしたが、紅は、坊主の言葉に一瞬動きを止めた。そして、くくくくく・・・と、笑っている。
「おまえが五月蝿いっっ、このバカ。」
 童子様が坊主の叫びにハリセンをかましているが、こちらも顔が笑っている。
「あーもーせっかくのお仕置きタイムに水を注されました。」
 元帥様も髪を掻き揚げつつ笑っている。寺の女房の昼寝の邪魔だから静かにしろ、と、坊主はおっしゃっているのだ。どんだけベタ惚れだ、と、全員、内心でツッコミだ。
「王子様、続きは無言で? 」
「しょうがねぇーな。」
 再度、元帥様と王子様は立ち会うことにした。ただし、無言という条件はつける。そのうち、続々と年少組が帰ってきて、その頃に、ようやく寺の女房も起き出してきた。みな、女房の顔と亭主の顔を見比べて、ニヤニヤしているのだが、女房には、なんのことだかわからないなんてことになっていたりする。


 夕方の出勤時間まで、年少組がわいわいと捲簾のおやつを食べた。盛りだくさんな内容なので、さすがに余ったから、それは店の夜食として持たせた。
「さて、真打ちといこうぜ。」
 けけけけけ・・・と、捲簾が、年少組を送り出してから冷蔵庫から出したのは、中華高級品満載の冷菜だった。年少組には、カロリーの高いのを用意していたが、酒の肴には合わないものだった。
「はははは・・・さすがに、これはちびちゃんたちには出せませんね。」
 酒のほうも、こういう時は故郷の酒に限る。わざわざ、チャイナタウンで、調達してきた。ニールと刹那も店の手伝いに出てしまったから、残っているのは上司様たちだけだ。寺の面子には、帰ってきたら出すつもりだが、まあ、のんびりと酒を呑むには、この面子のほうが楽しい。
「そろそろ帰らないといけないな? 」
「明日、動物園に付き合ったら、三日フリーをもらいますよ? 金蝉。」
「俺はかまわねぇーぞ。じゃあ、帰るのは四日後だな。」
「そんなところでしょうね。・・・・帰るのが億劫になってきた。」
 正直、悟空と、こうやってのんびりできのは久しぶりのことだ。だから、この時間が終るのは寂しい。
「永住できるわけでもないから諦めろ。」
「そうなんですけどね。悟空が友達をたくさん作って勉強したり働いたりしているのを見ると嬉しくて。」
 小さい悟空には友たちが居たが、ひとりだった。今は、たくさんいるし、何の束縛も制限もなく生きている。それが何より嬉しいし、それを目に出来るのは幸せだと三人は感じている。僅かの時間だが、それに付き合えた、この休暇は何よりのものだった。
「どうせ、年に一度は本山に来るんだから、今のとこは、それで我慢しろ、天蓬。」
「わかってますよ、捲簾。」
 ぐびぐびと黄酒を呑みながら、元帥様は頬を歪める。まったく逢えないわけではない。だから、今のところは、それで満足しておくしかない。そのうち、悟空は、こちらの側に帰ってくるのは決まっていることだ。帰ったからと言って、何か仕事があるというわけでもないのだが、一度は、そちらに住まないと、神仙界の重鎮たちも落ち着かないらしい。ただし、当人が現在の生活を満足したら、という但し書きはついているから、慌てることもない。
「何年かしたら、また用事を作れ。」
作品名:こらぼでほすと 闖入10 作家名:篠義