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永遠に失われしもの 第16章

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「一体何時までアナタの余興につきあわせる
 つもりですか?
 いつ、カール・オレイニクの
 魂の回収に向かうのです?」



 角ばった眼鏡の奥から、
 ウィルはセバスチャンを睨みつけた。
 葬儀屋は演奏に満足したのか、
 半分眠りかけている。



「大切なぼっちゃんへの音楽療法です。
 綺麗なものに触れれば、
 心洗われると申しますでしょう?

 大体、私にとっては我が主と共にいる事が
 本業で、その他こそが余興ですが--

 もうそろそろ、貴方の交代の時間ですね」



 ヴァイオリンをしまいながら、
 そうセバスチャンが言う間に、
 夕闇に沈んだ中庭には、
 赤く長い髪をした死神が現れていた。



「お疲れサマ~~Death!」



 ウィルとセバスチャンとの間を交互に、
 子犬のようにはしゃいで駆け回るグレル。



「グレルさんには、後で美味しいディナーを
 ご用意致しますから、
 少しの間だけ、
 ここでぼっちゃんを見ていて頂けますか?

 デザートもご用意しますよ」



 これ以上はないと思える理想の位置に
 造作された気品ある細い眉と、
 甘く翳る紅茶色の瞳、長く密集した漆黒の
 睫毛に、涼やかに通る高貴な鼻筋、
 艶美な微笑をたたえる色香の漂う口元、

 このように戦慄する程美しい顔を寄せて、
 頼み込まれれば、グレルは断る術もない。



「モウ・・来た早々、お留守番頼むなんて・
 この、イケズっ!

 でも、イイわっ・・
 デザート期待しちゃうから。
 
 甘い、甘すぎるほど、とろめいて、
 濃厚で、身も心も溶かすような、
 体の芯から崩れちゃいそうな程の・・」



「キスは無しですよ」


「もう、セバスちゃんったら、
 コッチが恥ずかしくなるほど、
 イヤラシイんだから・・
 まだそこまで、言ってないのに・・
 
 そりゃ、考えてたけど・・

 キスだけは駄目だなんて、
 どこかの娼婦まがいのことを言うアナタ」



 グレルはセバスチャンの細いが、十分に
 男らしい白い首筋に両腕を絡ませ、
 しなだれかかり、上気した頬を寄せる。
 


「キスだけじゃなくて、キスも!です」



 セバスチャンが両腕に力をこめて、
 グレルを突き飛ばそうとする前に、
 二人の鼻先を、ウィルのデスサイズの、
 刃が通りぬけた。



「下劣二倍ですね。

 胸のむかつきを通り越して、
 はらわたが煮えくり返ります。


 コレにまかせて、私と死神大先輩にあたる
 この方をお連れしていくつもりですか?

 たかが一枚の絵と、一つの魂ごときに」


「ええ、そのつもりですが?

 葬儀屋さんには、ちょっと見てもらいたい
 死体もございますし」



 葬儀屋は心地よい眠りから眼を覚まして、
 体を起こした。



「ヒヒヒ...死体だって?
 そりゃ行くさぁ...ああ、楽しみだねぇ」


「このお方がそう仰るならいいでしょう。
 ではさっさと用意なさい。

 もうあと二十分で、
 私の就業時間は終わりです。

 アナタのせいで残業なんて、これ以上
 まっぴら御免ですよ」