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永遠に失われしもの 第16章

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カールの絵から次々と噴き出す、
 シネマティックレコードは、
 尚もセバスチャンの四肢に絡みつく。

 漆黒の燕尾服と白いシャツの袖は、
 絡みつかれた部分で至るところ裂かれ、
 足からも無数の傷から、
 血が流れ出している。

 その黒い衣服から見え隠れする、
 セバスチャンの青白い肌と滴る赤い血は、
 痛々しいが同時に艶かしくもあった。


 絵から噴き出る発光したフィルムを、
 ウィルは懸命に切り落とそうとするが、
 その努力も空しく、
 さらに倍以上の勢いで噴き出している。
 フィルムの一部は、ウィルのデスサイズの
 柄に巻きつき、もぎ取ろうとさえする。



「考えられない。一人の人間からこれほどの
 シネマティックレコードが・・」


「これは人間だけの記憶じゃないからね...
 夢喰らいの悪魔の見せた部分は、
 空白のフィルムのコマになって、
 余計に...
 
 でもそれにしても、多いねぇ」



 見兼ねて死神の大鎌を出し、
 ウィルに加勢する葬儀屋がつぶやいた。

 攻撃してくるフィルムを避けながら、
 夜闇に沈んで黒い塊となった列柱の上を、
 銀色の長い髪をなびかせ、
 葬儀屋が飛び伝い、大鎌を振るう。


 葬儀屋の大鎌とウィルのデスサイズで、
 切断されたシネマティックレコードは、
 蛇がのたうちまわるように暴れながら、
 空中を舞い、見る見る間に巻きつき合い、
 人の頭の形を形成していた。

 徐々に、首、胸、腹、腰、足と形成され
 白いフィルムで構成された人の形は、
 さらに体の各部分を鮮明にしていく。

 今や目鼻立ちから、その表情まで、
 指先の爪、足の小指の爪まで精巧にできて
 白く発光する人間のようになっていた。


 それは、熱望するような表情を浮かべつつ
 空に四肢を吊るされたセバスチャンに、
 ゆっくりと近づく。

 色がついてないとはいえ、既にそれは、
 亡きカール・オレイニクだと、
 十分分かる容姿であった。

 発光する口が開かれ、同じ言葉を何度も
 言い続けている、声もなく。


 Czy cierpisz?
 Chcę zobaczyć twój ból
 Chcę twojego pięknego cierpienia



「なんて言ってるんです?この化け物は」



 苦戦しながらウィルは、怒鳴って尋ねる。


 骨を折らんばかりに締め上げられ、
 その苦痛に、品のある眉を歪め、
 眉間に皺を寄せながら、
 セバスチャンが答える。



「 Are you suffering?
  I want to see your pain.
  I want your beautiful suffering.」
 


 白い発光体は、セバスチャンの体に密着し
 細い顎を上げさせ、
 苦痛に細められた紅茶色の瞳を見つめる。

 黒いタイで締められた、
 シャツのカラーに発光する手をかけ、
 一気に下まで引き千切ると、
 白い大理石でできた、
 古代ギリシア彫刻の胸像のような、
 セバスチャンの胸板から腹までが晒された


 セバスチャンの尖り浮き出た鎖骨の下の、
 白く吸い付くような肌に、発光した唇と舌
 が張り付き、下へ這っていく。

 

「何してるんですか--早く回--収」



 言い終える前に発光した唇は、
 セバスチャンの胸にある、
 僅かな突起に辿り着き、
 手の先まで尖らせて一気に胸を貫くと、
 手首まで潜りこませた。

 セバスチャンの紅茶色の瞳は大きく見開き
 口からごふっと大量の血が吐き出される。