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永遠に失われしもの 第16章

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「駄目ですね。まだ欠けてます」



 ウィルは、集めた一コマ一コマを確認した
 あと、大きなため息とともにつぶやいた。

 何も描かれていないコマがあるとはいえ、
 どうしてもシネマティックレコードの、
 フィルムが時系列に並ばないのである。

 応援のため派遣された、
 数名の部下の死神は、月光の中、
 草の葉から、石の裏まで丁寧に、
 あたりを捜索している。

 すでに燃やされた絵の炎は消え、
 神殿の列柱の足元には、
 炭が残されているだけだった。



 ・・みたところ、あの害獣は、
 何も手出しはしていなかったはずですが。



 失われたコマが、魂の審査において、
 死を免がれる決断に至るほどの、
 重要性を持つとは全く考えられないが、
 ウィルの性分から許しがたい事であった。


 
 ・・大体、ここがサテュロスの神殿と、
 呼ばれている事すら気に入らない。
 サタンの神殿など、願い下げです・・



「他の地域も総出で応援を!」



 ウィルは立ち上がって腕時計を見つめ、
 部下に怒った口調で命じた。
 


 セバスチャンは、破れた燕尾服から
 懐中時計を取り出し螺子式の蓋を開ける。

 ローマ非カトリック教徒墓地では、
 葬儀屋が掘り出した土を埋めなおして、
 最後に地面をスコップで叩き、
 固めているところであった。


 セバスチャンは時計をウォッチポケットに
 しまいこみ、再び胸を押さえる。

 デスサイズで切りつけられた腕の方が、
 悪魔にとっては重傷である筈だが、
 塞がりつつある胸の傷の奥に、
 鋭い痛みがずっと残っていた。


 
 そう発光体はセバスチャンの心臓奥深くに
 発光体の人差し指の爪のごくごく僅かな、
 先端をめり込ませていた。
 
 そして、それは死神に回収された際に、
 フィルムに戻り、ある一コマだけを
 同じ場所に残して消えていったのだった。

 その違和感に気づくには、セバスチャンは
 あまりにも多くの傷を負いすぎていた。

 特にデスサイズによって切り裂かれた両腕
 の焼け爛れるような痛みと、熱は、
 彼の躯の内部の異物感など、
 完全に吹き飛ばし去っていた。


 そして、いまやそれは、
 フィルムの形状をとらず、セバスチャンの
 細胞内部を侵食していくように、
 見えない傷をつけながら、
 心臓全体、いやもっと深いところまで、
 覆い始めていた。透明なフィルムのように



 セバスチャンが寄りかかっていた墓石から
 立ち上がりながら、葬儀屋に言う。



「そろそろ戻ります。ディナーの用--」



 再び酷い血の塊を吐き出して、
 膝から崩れ落ちるセバスチャンを、
 寸手のところで、葬儀屋が支えた。



「執事君、ちょっと、
 胸が苦しくなるかもしれないけど...」



 葬儀屋は、セバスチャンを肩に背負って、
 死神の大鎌で空間を切り裂いた。