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rose'~prologue~

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肌に滲んでいた汗が引いて行き、漸く火照りが治まった。

何だか、少し疲れた。

エドはぱたり、と、ベッドに倒れ込み、静かに瞳を閉じた。

窓の外から聞こえる音に混じって、反対側のドアの向こうからも小さな音が聞こえる。

大佐の、音だ・・・何・・・やってんだろ・・・

ぼんやりと思いながら、エドはドアの外から聞こえる音に集中した。

かたん、ことり。

ぱたん。

ザアァァァ・・・

きゅっ。

あぁ・・・棚を開けた音だ・・・

カップを取ったのかな・・・

水の音がする・・・

そうそう・・・あの蛇口、高い音がするんだ・・・

音を聞きながらロイの行動を思い描いていたエドは、何時しか眠りの中に意識を投じていた。

部屋の中に、規則正しい寝息が広がり始めて数分後。

二人分の飲み物を手にしたロイが、姿を現した。

「鋼の、アイスティーでいいか?」

言いながらドアを開け、ベッドの上で寝息を立てているエドを見たロイは、微かに微笑み音を立てないように静かに

サイドテーブルの上にトレイを置いた。

身体をくの字に折り曲げ、まるで赤ん坊のような寝姿のエドの隣に腰を降ろし、頬に掛かった髪を耳の上に掻き

上げてやると、擽ったかったのか、ほんの少しエドが首を竦めた。

その様子が可愛らしく、ロイは今度は顔の斜め下の位置にあるエドの手に触れた。

一本一本、掬うように指を弄っていると、不意にエドの指がロイの指を握った。

中指と薬指、そして小指の三本で、軽く。

何だか本当に、赤ん坊のようだとロイが思った時。

小さく、エドの口が動いた。

「た・・・ぃ・・・さ・・・」

そうしてまるで甘えるように、シーツに頬を摺り寄せる。

ロイは空いている反対側の手でエドの髪を撫で、軽く頬にキスをしてやり、そのままエドの耳元で囁いた。

「私の事が、好きかね?」

耳元に掛かる息に身を震わせ、再びさくらんぼのような唇が動く。

「ぅ・・・ん・・・好き・・・ぃ・・・」

「寝ている時の方が、素直だな。」

くすくすと笑いながらエドの頬を突付くと、エドは小さく声を漏らし、ロイの指を軽く握った指に力を込めた。

ロイはほんの少し考えると、再びエドの耳元に唇を寄せた。

「ずっと、このままの身体で居てもいいと、少しでも思うかね?」

まともに答えが帰って来るとは、思わなかった。

唯の悪戯のつもりで、居たから。

「居て・・・も・・・・・・い・・・ぃ・・・」

まさか本当に返されるとは。

ロイは微かに眉を上げ、そうして口元に笑みを湛えた。



次の日。

東方司令部に、ヒューズを尋ね、ある人物が訪れた。





夏の日差しが今までよりも特に強くなり、最高気温が38℃にまで達したその日。

東方司令部に一人の人物が訪れようとしていた。

彼の上等のシャツの背には、既に汗で大きな染みが出来ており、屈強な体躯に貼り付いていた。

腕に掛けたジャケットを持ち替え、額の汗を拭った彼は、手にしていたそこそこ厚みのある封筒を

確認するようにそれに視線を移し、そうして入り口に続く階段を上り始めた。

司令部内に入ると、比較的ひやりとした空気が体を包み、彼は安堵したように小さく息を付いた。

受付で足を止める事無く、馴れたように目的地に向かう彼を、擦れ違う者達が視線で追う。

それ程までに、彼は目を引いた。

とあるドアの前で漸く立ち止まった彼は、そのドアを軽く、ノックした。

「入り賜え。」

ドアの向こうから聞こえた声に従い、彼はドアを開けた。

「お久し振りですな。マスタング大佐。」

部屋の奥のデスクに向かい、彼が声を掛けると、彼の姿を認めたロイが、ほんの少し眉間に皺を

寄せた。

「今日はどうした?」

「ええ、ヒューズ中佐にちょっと用事がありましてな。中佐は何処に?」

自分に用事があったのでは無い事に少し安心したように、ロイは眉間に刻んでいた皺を消した。

「ヒューズなら今エルリック兄弟と図書館に行っている。もうすぐ帰って来る筈だ。」

そこに掛けて待っていろと促し、ロイは手にしていた書類をデスクに置いた。

言われた通りに、彼はソファーに腰を降ろした。

彼の体重を受け、ぎし、とソファーが音を立てる。

体圧に合わせて沈み込んだソファーに、ロイはちらりと彼を観た。

「東も、相当暑いですな。セントラルよりはましかと思いましたが。」

ロイと目が合った彼が、そう口を開いた。

「今年は異常気象らしい。」

短く言葉を返し、ほんの少し間を置いて。

「所で、ヒューズに用事とは言え、わざわざこんな所に何の用だ?」

軍服で無く、普段着で司令部を訪れているあたり、恐らく公用では無いと把握したロイは、再び

彼に聞いた。

すぐに言葉が返されなかった事で、彼が一瞬迷った事を理解する。

「・・・大佐は、『ロゼ』をご存知ですかな?」

その言葉に手を止め、ロイは彼に視線を移した。

「あの、賢者の石の出来損ないか?」

ええ、と、彼は頷いた。

ご存知なら話が早い、と、彼は手にしていた封筒から書類を出す。

ロイは席を立ち、彼の向かいに腰を降ろした。

「どうぞ。」

書類の向きを変え、彼はロイにそれを差し出した。

その書類を手に取り、目を通す。

文字を追っていたロイの目に、驚愕の色が浮かび上がる。

「・・・これは・・・本当か・・・?」

「ええ。」

頷いた彼に、ロイは深く溜息を付いた。

「何て事だ・・・」

ロイが背凭れに深く背を預け、ぐったりと肩を落とした、その時。

不意にドアがノックされ、図書館から帰って来たエドとアル、そしてヒューズが姿を現した。

ソファーに腰を落ち着けている彼に気付いたエドが、「げ。」と言葉を漏らす。

「・・・アームストロング少佐・・・」

エドの疲れたような声が、ぽつりと零れた。

「おお!エルリック兄弟!久し振りではないか!」

エドとアルの姿を認めたアームストロングはソファーから立ち上がると、両腕を大きく広げ、ピンク色の星を

飛ばしながら嬉しそうに二人に近付いた。

アームストロングの行動を察したエドの顔色が見る見るうちに青くなる。

エドがアームストロングに抱きしめられ掛けた、その時。

寸での所でアルがエドを引き寄せどうにかエドが潰される事を免れた。

エドを抱きしめられなかったアームストロングは、少々寂しそうな表情を見せたが、ふとエドの様子がいつもと

違う事に気付き、まじまじとアルの後ろに隠れるエドを眺めた。

「エドワード・エルリック…お主…」

そう呟き、ヒューズに視線を移す。

「まさか『ロゼ』を…?」

ヒューズは乾いた笑みを浮かべ、「ああ…」と言葉を漏らした。

「何と…」

そう漏らしたアームストロングの隙を付き、エドはアルの後ろからするりと抜け出し、ソファーに置き去りに

されているロイの横にちょこんと腰を落ち着けた。

木の葉柄の、黄緑色のふわりとしたワンピースが緩やかに舞い、エドの足元を隠すように落ちた。

そうしてロイを見上げ、へへっ、と笑みを漏らす。

そんなエドを優しく引き寄せ、ロイはエドの髪にキスをした。

「観てられねぇなぁ。」
作品名:rose'~prologue~ 作家名:ゆの