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世の中、何があるのか分からない

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ノンキで間延びした声とともに、頭を撫でられた。

「痛いのは足だ。なんで頭なんだ」
「いいじゃん。いいじゃん。こうしたらよくなるから。僕はこうして治してきたんだ」
「ウソ言うな」
「ホントだよ、子供のころ、クスリなんか貰えなかったから、そうやって治してた」
「ハッタリだろ」
「そんなこと言うなら、もっと別の場所でも撫でるよ、いいの?」
「うっ!」とドラコは言葉に詰まった。

相手はかなり酔っ払っているし、眠くて半分意識も溶けているのだろう。
そんな相手とまともに遣り合って、バカをみるなんてゴメンこうむりたい。

逃げたいけど、自分は捻挫して動くことができないし、頼みの綱の杖も折れている。
「うむむむ……」と唸って、観念して目を閉じる。

黙り込んで大人しくなった自分の頭を、何度も撫でてくるハリーの手は、この際、我慢することにしよう。
酔っ払っているだけなので、別に相手に悪気があるわけではなさそうだ。

本当は眠たいだろうに、ハリーはご機嫌な顔で「痛くない、痛くない」と呟いて、ドラコの頭を撫でた。

ドラコは背を丸めて、相手の懐近くで、丸くなった。
また、ハリーがドラコの頭を撫でた。

「痛くない」と言われると、なんとなく、本当に痛みが薄らいでくるような感じがした。
(自己暗示みたいなものだ)と思おうとしたけど、もう、ドラコもどうでもよくなってきた。

部屋は暖かくて、ベッドは柔らかい。
ハリーのまじないの言葉も、撫でる手つきも、ドラコの昂った神経を落ち着かせた。
自分のまわりすべてのものが、居心地がよかった。

もう、それだけで満たされるなんて、自分は結構単純なんだなと思ったりしつつ、ドラコは眠りに落ちた。