Activation of love /GundamOO
「それで。なんと答えたんだ!」
さも下らない、という風に肩肘をつきながら本の頁を捲っていたティエリアが突然本をバタンと閉じて声を張り上げた。
「なんだ……聞いてたの。」
憎々しげに唇をぎりりと噛んで、眼鏡越しにこちらを睨む。
「当然だ。こんな近くで話されたら嫌でも耳に入ってくる。」
ほんとに嫌なら最初から側に居ないよね。
「気になる?」
別にからかうつもりで言った訳じゃ無いのに、怒りの形相にこめかみの青筋が加わる。
「そんなに怒らないで、怖いよティエリ……ぐっ」
ぼすっと重低音を響かせながら、ティエリアの読んでいた分厚い本が僕の頭上を直撃する。
「君の下らない戯言を聞いてやってるんだ。さあ、早く答えろ。答えないと────」
「万死に値するんでしょ。もう。」
ティエリアは数少ない僕の友人だけど、強烈にエキセントリックでしかも暴力的。気の弱い僕はいつも一方的に負かされてる。声をかけてきたのは彼の方からで、学科も違うし一般教養以外は特に接点もないのだけれど、見かけると一緒にランチをしたりお茶を飲んだりするようになった。まるで外見が女の子みたいだから、時々僕の彼女と間違えられることもある。でもこんな乱暴な女の子、僕は、やだな。
「なんだと……。付き合うことになった────だと?」
泣く子も黙るティエリア様の怒りは頂点を知らないらしい。
「痛い!なんで殴るの、もう。」
「黙れ。掠っただけだろう。」
僕が一言発する度に握り拳が宙を舞う。僕は身体が頑丈なのだけが取り柄だけど、最近はさすがにすんでの所で交わす技も身につけた。
「もういいよ。怒られなきゃいけない話じゃないし……」
「アレルヤ・ハプティズム。君は何も分かってないな。」
ティエリアの金属質な瞳が僕を射貫く。
「そんな氏素性も知れない小僧に何をうつつを抜かしているんだ。身元はしっかり確かめたのか。」
「うん、名前も学校もしっかり聞いたよ。連絡先も教えてくれた。」
「そういう事を言っているのではない!このうつけめ。」
再びティエリアの鉄槌が振ってきたのを皮一枚で避ける。ティエリアの拳とテーブルが鈍い音を立てて接触した。
「くそっ……馬の骨の分際でこのティエリア様に盾突くとは許すまじ。私がこの手で握りつぶしてくれる!」
最後の方はなんだか怖い事を言っていた気がするけど、よく聞き取れなかった。
その後も僕を無視して歯軋りをしながら、何かぶつぶつと独り言を言っているティエリアを置いて、僕はそっとその場を後にした。