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Echo /GundamOO

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 ニールと恋に落ちたのは僕が十六歳の時で、彼はそれより五つ年上だった。たまたまハイスクールのOBとして遊びに来ていた彼に見初められた形で交際が始まった。彼はその手においては長けていたようで、まだ子供だった僕は実に巧みに易々と籠絡されてしまった。
 彼は明朗快活、親切でハンサムで、それでいてナイーヴで。男女問わず人気があった。一方僕はと言えば陰気で人見知りで、いつもハレルヤの後ろに隠れているようなタイプだった。そんな内気で初心なところが気に入ったのだ、とニールは笑っていた。
 それまで僕とハレルヤしか居なかった狭い世界は一気に拡がって、でもそこは見る見るうちにニール一色に染まっていった。


 その頃の僕はもうニールしか見えなくなって、生活の、人生の全てがニールに置き換えられた。
 きっと、それを面白く思わなかったのだろう。ある日、僕が学校から帰ると、僕の部屋にニールとハレルヤが居た。それも、友人同士のそれではなく、濃厚に絡み合って。
 頭が真っ白になった僕は話も聞かず二人を部屋から追い出して、部屋に鍵を掛けた。それから一週間僕は部屋に閉じこもり、一ヶ月一歩も家から出なかった。そして気がついた頃にはニールは海外の大学に留学していた。以前から夏期休暇が終わる頃には行く、と聞かされていたのに、僕はすっかり忘れていた。その後も彼からメールや電話や、手紙が送られて来ることもあったけれど、僕はどれ一つ目を通さず、返事をしなかった。そしてそれ以降、彼とは顔を合わせていない。


 ニールとの事はいい思い出だけを残しておきたい、と都合の良いことばかり考えていた僕が、こうしてハレルヤやライルの顔を見ただけでこれほど動揺してしまうのは、結局まだ何も消化できていなかったという事なのだろうか。
 濡れた髪をタオルで扱きながら、ぼんやりと端末を眺める。階層の奥深くに仕舞い込んだニールと僕の写った写真。こうしてみると、まだ二人とも幼い。いつの間にか、僕もこの時のニールと同じ歳になっていた。なのに何一つ彼に追いついてはいない気がする。もしあるとすれば身長くらいか。
 では彼はどれほど変わっただろう。ライルの顔を見れば、今ニールがどれほど大人になったかが窺い知れる。今もきっと、すごくモテるんだろう。ライルには少しニヒルな翳があるけど、ニールにはそれがない。明るく頼もしく、気が利いていてセンスもよくて。良いところしか思い出せない。そんな兄を持ったら、弟がそれを多少卑屈に感じても仕方ないかもしれない。(僕がハレルヤに対して劣等感を抱くのと同じように。)
 今にして思えば、僕にはとても勿体ない人だった。元々不釣り合いだったように思う。彼が大学を卒業しても戻ってこないのは、きっと向こうで新しい生活を見つけたからだ。いい人と出会って幸せに暮らしているかも知れない。
 そんなことを滔々と考えているのが無駄だったと気づく頃には、濡れた髪も身体もすっかり冷え切ってしまっていた。

作品名:Echo /GundamOO 作家名:Anne Katie