The first star of the evening
「兄さん、諦めちゃ駄目だよ。」
アル…
「欲しいものは手に入れる。僕たちは今、体がちゃんとある。」
そうだ…
「もうこれ以上後悔しちゃ駄目だよ。」
あぁ、そうだな…
「アル、さんきゅ。」
やるだけやってみよう。
職場に頼んで、もう1日休ませてもらった。
一般人となった俺が入れるかは分からないけど、
俺の足はまっすぐ中央司令部に向かってる。
目の前にすると、若干足がすくむ。
以前何も気にせず、ずんずん入っていった所だとは思えない。
昨日一晩考えた。
俺らしく、あいつが好きだと言ったときの前を向いていた俺らしく。
振り返らない。
俺は振り返らない。
俺は未来のために、
受付で電話を借りて中尉に連絡を取った。
驚いていたけど、来たことを喜んでくれたみたいだった。
「エドワード君。」
しばらく待っていると、中尉が来てくれた。
少し髪が長くなってる。
「中尉、久しぶり。突然ごめん。」
「いえ、来てくれてとっても嬉しいわ。皆のところに案内するわね。」
「ありがとう。」
連絡はたまに取り合っていたけど、
会うと急に久しぶりなんだという実感がじわじわとわいてきた。
「皆元気?」
「えぇ、皆相変わらずよ。」
「聞かないの?」
「何のことかしら?」
中尉のことだから、
俺がロイをひたすら避けていることに気付いていたはず。
何故急に顔出したのか気にならないのかと思ったが、
中尉は何もかもお見通しだったのかもしれない。
皆のところより先に案内されたのは、今は准将となったロイの執務室。
以前より少しだけ重厚間が増したドアの奥、あいつが居るんだ…
「良い瞳をしてるわエドワード君。」
そう言って中尉は廊下を歩いていってしまった。
深呼吸。
よし、大丈夫。
俺は後悔しない。
以前のようにノック無し。
顔は自然に笑っていた―
「よう。ロイ」
「はっ・・がねの!?」
すごく驚いた顔、中尉は伝えてなかったんだな。
そんな顔は当時もなかなか見れなかったな。
「俺はもうとっくに鋼じゃないけど。」
不適に笑ってみせる。
「あっあぁすまない…突然どうしたんだ。」
余裕の顔を崩してやったと思ったけど、すぐ冷静になりやがった。
相変わらずムカつく。それが今はなんだか心地良いけど。
「会いに来たんだよ。ロイに。」
「!!」
「伝えたいことがあってさ。」
「・・・・・なんだ?」
ずっと叶わない想いだと思ってた。
憧れだけで終わると思ってた。
だけど、その想いが通じた。
すごく幸せな時間を沢山くれた。
いつか終わるかもしれないという恐怖もあった。
それがあの日現実になって、終わったと思った。
だけど、俺は何もしていない。
ロイを手に入れるために俺はまだ何もしていない。
諦めるのはまだ早い。
作品名:The first star of the evening 作家名:おこた