Un libro di caso di fortissimo
静雄が消えてからまた一週間がたった
あれから一度も静雄の姿を見ていない
本当に、ただの一度もだ
あんなに一緒に居たのに
静雄は俺に何も言わずに姿を消した
会社が肩替わりしていた金もきれいさっぱり返済して
何も残さずに消えてしまった
「どこ、行っちまったんだバカヤロウ…!」
イライラ、
イライラ
どうしようもなく苛つく
ざらつく
その理由なんか嫌になるほどわかっている
「静雄」
呼んでも答える声はない
歩いてもついてくる気配もない
なにも、ない
「ひどい顔だねぇ」
「…何しに来た」
「わんちゃんが居なくなったんだってねぇ」
会いたくない、見たくもない顔って云うのは誰にだってある
静雄にとっての情報屋のように
俺にとっては、この男がそれだった
「わんちゃんに逃げられて、傷心の坊やを慰めにね。ほら、おいちゃん、優しいからさ」
するりと伸ばされた腕から逃げるように二歩下がる
何が不思議なのか、赤林はひどく驚いた様子で目を丸くした
「あれぇ、どうして逃げるのさ」
「触んないで下さい」
「怪我したにゃんこみたいだねぇ」
絡め捕られるような口調が嫌いだ
何でも見透かすような空気が嫌いだ
纏う色が、要するに俺は、この男が嫌いだ
「仕方ないねぇ」
口調ばかりの言葉とは裏腹に、赤林の纏う空気は楽しげだ
コツコツと意匠を施した杖を鳴らしながら距離を詰めてくる
「おいちゃん、坊やのわんこがどこに居るか知ってるよぅ」
「……っ!」
どうして
なんで
なんだってあんたが
俺が知らない静雄の居場所を、赤林が知っている
それは俺の足元を崩すには充分過ぎる事実だ
フォルテッシモの不在