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Shina(科水でした)
Shina(科水でした)
novelistID. 3543
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Un libro di caso di fortissimo

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海に来ていた
山じゃなくて、海にしたのはトムさんが山より海が好きだったから
泳げるような海だと万が一ってことがあるから、わざと遊泳禁止の場所にした
まあ、事後確認だったけど

水平線とテトラポットの山を眺めながら浜辺を歩く
ざくざくと踏んだ砂浜は何だか足を取られそうなくらい不安定で、でもそれが楽しかった

溜まりに溜まっていた会社への借金は、数日間のバイトで清算出来た
金っつうのはあるとこにはあるもんなんだなと、渡された札束にぼんやり思う
清算してもまだ暫くは生活できそうな額に、ああ、これで逃げ出せると心底安心した
何度も書き直した辞表を出して、そのまま俺は池袋から逃げ出した

適当に電車を乗り継いで、海が見えた所で降りた
スイカが使えなかったり、無人駅があったりちょっと戸惑うこともあったが、そんなのはすぐどうでも良くなった

海が見えた方へふらふら進む
松林を抜けてコンクリートの急な坂道を登ると目の前には真っ青な海が広がっていた
所々帯状に色が違うのが目に付いた
青の画用紙に濃紺の線を引いたようにくっきりと色が別れていたのが印象的だった
色が濃くなってるところは、周りの海よりも深くなっているのだと、一軒しかない宿のばあちゃんが言っていた
時折、強い波が砂浜までやって来くる
それに足を取られると一気に深いところまで持ってかれて危ない
だから泳いじゃいけないよ
なんて、方言交じりに忠告された
まったく子供扱いだ
だけど、俺がガキであることには違いなかった

それから毎日、俺は海を眺めている

ゆらゆら、ゆらゆら濃紺も青も揺れて光を反射している

早く忘れたいのに、まだ俺はあなたにしがみついている


フォルテッシモの未練