Un libro di caso di fortissimo
赤林に言われるがまま、告げられた路線を辿り指示された駅で降りる
潮の匂いが濃い
そう言えば車窓から海が見えていた気がする
どうせ海に行くんなら静雄と遊びに来たかった
インドアの静雄を引っ張って、車を借りて海までドライブ
サーフィンでも教えて、大したことないのにうまく感じる海の家の飯を食ってくたくたになるまで遊ぶ
そんな風に、過ごしたい
まあ、それを叶えるためには静雄を見つけなけりゃ始まらねぇわけだ
とりあえず、海の方へ向かって歩く
居ても居なくても俺はきっと微妙な気持ちになるだろう
今だって静雄の居場所を教えられたって事実に凹んでいるのだ
静雄のことなら何だって分かっていたつもりだったのに、結局は上辺ばっかりで知った気になってたってことだ
畜生め
「居たよ」
果たして、静雄はそこに居た
その事実に俺はやっぱり微妙な気持ちになる
嬉しい、嬉しいんだが、それ以上に悔しい
本当になんだって、あの人が静雄の居場所を知ってる
目立つ長身が、砂浜をぽすぽす歩いている
脱色のしすぎで痛んだ金髪が潮風にあおられ揺れている
ああ、静雄だ
テトラポットが途切れた波打ち際
猫背が立ち止まって見つめた海の先、それにお前が盗られそうで嫌な汗がつたった
後は、衝動のままだった
堤防から転がり落ちるように砂浜へ駆け下り、勢いのまま静雄の腕を掴む
もしかしたら振り払われるかもしれない
でも、静雄は払わない
そんな奇妙な確信が俺にはあった
そうして、やはり腕は振り払われなかった
フォルッテッシモ捕縛