Un libro di caso di fortissimo
結婚するんだって
笑っておめでとうございますって
幸せになってくださいねって、
そう言って笑え
笑え俺
笑えるだろう?
「静雄!」
いつものように海岸をぶらぶらしていたら不意に腕を掴まれた
怖くて振り向けない
名前を呼ばれたからだ
それだけで、誰なのかわかってしまった
なんで、どうして
疑問符ばかりが頭を過ぎる
腕を振れば簡単に逃げられる
逃げられるのに、1ミリも身体が動かない
「静雄」
もう一度名前を呼ばれた
こわい
ただ、こわい
どうして、どうして、トムさんがここに居るの
やっぱり海にしなけりゃ良かった
山とかいっそ海外とか、もっと遠くに行けば――――…
「静雄…っ」
喉がカラカラに渇いている
焦げ付くような焦燥が返ってくる
木偶のように立ちすくんでいた俺は、呆気ないほど簡単にトムさんの両腕に抱きすくめられた
どうして
どうして抱きしめるんですか
俺は、とんでもない恩知らずなのに
あんたの結婚を幸せを心から喜べない大馬鹿野郎なのに
どうして
どうして
どうして――――…
フォルテッシモの発見