Un libro di caso di fortissimo
「な、んで…」
「なんでって、おまえが急にいなくなるからだろ!」
怒鳴られて、それから、心配したとトムさんが言う
心配なんてしなくていいのに
化け物の心配なんてしなくていいのに
心配する対象は俺じゃなくて、これからあんたの奥さんになる女の人なのに
どうして、どうして
ぶわ、と目の奥で水が広がる感触がした
カラカラに渇いていた喉も、奥の方から水が競り上がってくる感覚がする
「静雄?」
「もう、俺のことなんて、ほっといてください…」
もう、やなんです
トムさんの前で、優しい気持ちでいられないのも
きれいな気持ちで、あたたかい気持ちのままでいられないのも
嫉妬だとか、羨望だとか、そういう醜い感情で埋もれていくのも
全部、全部いやなんです
それなのに、どうしてトムさんは俺の手を掴むんだろう
「し、んぱいなんて、いりません。なにも、いりません。たくさんもらったから、もう、もういい。もういいんです」
苦しい、苦しい
もう、俺に構わないでください
手を伸ばさないでください
俺はあなたに優しくされると縋ってしまう
それはもう許されないことだ
フォルテッシモの戸惑い