ながいともだち
聖界一本釣は、川べりで、いつものように釣り糸を垂れていた。
そこにやってきた、聖遊男ジャック。
「よお、聖遊男ジャック!浮かない顔して、一体どうしたってんだ?」
「気にすんなよ……それより」
「お、なんだ?」
二人の表情はあくまで対照的で。
「お前……髪とか、邪魔だったこと、ないか?」
「おー、邪魔だよな!」
「いや、ないならいいんだ……て、ホントか?!」
「そうさ、俺も急に伸びちまったからな。ちょっとうつむいただけで顔にかかったりしちまうし、竿振るのにもうっとうしいよ」
「そーかあ、そーだよなあ!!」
急に男ジャックの顔が明るくなる。
「そういうとき、どうしてるんだ?何かいいやりかたがあるのか?」
聞かれた一本釣は、きょとんとした。
「どうしてるって……。何にもしてないぜ」
「え?」
「伸びちまったものはしょうがないだろ?……あ、きたきたきたっ」
「え?」
「ほらよっ!!フラダイスオオイワナの一本釣りだあ~~っ!!」
ざばあん。
大きく波立った川面から、ショッキングピンクと緑の迷彩模様をつけた巨大な魚が飛び出した。
「今日の晩飯は、コイツの塩焼きだ!うまいぜ~~!!」
「……じゃあな」
そこら中を跳ね回る大魚と格闘を始めた一本釣に背を向け、男ジャックは去って行った。
肩が、がっくり落ちていた。
一本釣は、魚の尾ビレを抱え込みつつ首をかしげた。
「あいつ、一体、何しに来たんだ?」