ながいともだち
今日一日を費やして、何の収穫もなかった。
ドロドロに疲れ果てた聖遊男ジャックは、簡易ベットの上にどさっと体を放りだした。
と。
「いでででで!」
うっかり仰向けに寝てしまい、毛先の結わえたところが背中に挟まってしまったのだ。
ごろごろ転がったあげく、やっとうつ伏せに寝直す。
「ちっくしょー……」
目尻に、涙が、滲んでいた。
やっと次界に辿り着き、やっと新都市建設にまでこぎつけたのに。
力だってヘッド級にパワーアップして、どんな悪魔が来ても蹴散らす自信がついたのに。
なのに、こんな小さなことで、イライラするなんて……。
「あーあ」
枕を抱え込んで、ため息をついた。
目に浮かぶのは、あの方の姿。
まるで奇跡のように、再び自分達の前に姿を見せてくださった……。
誰かに相談したい、と、思った時、最初に思い付いたのも、彼の方だった。
しかし。
(「聖遊男ジャック、そのようなささいことに気を取られていては、聖フラダイスの建設という大事業をなしえることなどできませんよ!」)
叱る時の彼の方の表情まではっきりと思い描くことができた。ついでに叱られている自分の姿も。
「……あーあ」
もう一度、ため息をついた。
ぐずぐずと悩む自分が嫌で、今日はもう寝てしまおう、と思った。
その時。
視界の端に、何かが引っ掛かった。
それは、少し離れたところにあるテーブルの上に置かれていた、大振りの、裁ちばさみだった。
男ジャックは『天啓』というものを感じた。