二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

【シンジャ】FLOWER TAIL【6月東京シティサンプル】

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 

 シンドバッド及びにシンドリア王国の事を皆が皆よく思っている訳が無い。この広い世界の中には良く思っていない者もいる。その事は知っているが、単なるシンドリア王国の政務官である自分を高い金で競り落とす者がいるとは思えない。先程から競り争う声が小さくではあったが聞こえて来ているのだが、選ばれた人間しか参加できない競りだけあって、聞こえて来ている額は普通奴隷を買うのに出すような額では無いものであった。そんな金額で自分を競り落とす者がいるとは思えない。
 一応もしも落札されてしまった場合の事も考えているのだが、落札されなかった場合どうやって逃げようかという事の方に重点を置いて先程から考えていた。誰にも落札されなかった場合、不要な物となった自分を組織の者たちは始末しようとするだろう。大人しく始末されるつもりは欠片も無い。競りに掛けられるのを待っているという状況であるというのに落ち着いているのは、逃げる事が出来ると思っているからである。
 何処からそんな自信が沸いて来るのかというと、今まで何度も今以上に危険な状況に身を置いた事があったからである。
(どうにかしてあれ【眷属器】も取り返さないと)
 眷属器というのは、金属器から力を与えて貰う事が出来る武器の事だ。シンドバッドが持っている金属器から力を与えて貰っている時以外にも使っているその武器を、捕まってしまった後取られてしまった。
 それが無いと金属器から力を与えて貰う事が出来無いという理由からだけで無く、自分にとって大切な存在であるので絶対にそれを取り返すつもりである。
(それについては後で考えるとして……)
 眷属器を取り返す事よりも先に、どうやって逃げるかという事について考えなければいけないという事を考えていた時、扉の向こう側から足音が聞こえて来た。足音は一つでは無かった。複数聞こえて来ていた。そんな足音がこちらへと向かっていたので扉の方へと視線を遣っていると、直ぐに扉が開き複数の男達が入って来た。
(来ましたか)
 部屋の中に入って来たのは、自国の人間を浚い売るという真似をした組織の者たちであった。自分が今から掛けられる競りは、その組織が行っている競りであるようだ。
「やけに落ち着いてるな。逃げられるとでも思ってるのか?」
 男達の先頭に立っている男は扉の前まで来ると、怯えた様子の無い自分を見てそう言った。
 全身から品の無さが溢れ出している腹の出たこの男が、自分の潜入していた組織の主である。
 自分を競りに掛ける事を決めたこの男とこうやって顔を合わせるのは、競りに掛けるという事を告げられた時以来である。男の言葉に返事をするのが面倒であったのでその言葉を無視すると、そんな自分の反応を不満に思ったのか憤った様子へとなった。
 それを見て失敗したなどという事を思う事は無かった。彼を怒らせた事に対して何の反応も取らずにいると、そんな自分の態度を不満に思ったのか、一層腹立たしそうな様子へと彼はなった。
「そうやって人を見下した態度を取ってられるのも今だけだ。準備をしろ」
「はい」
 後ろにいる手下らしき男の何人かが主の言葉を聞き、檻へと近づいて来る。
 一人が扉の錠前を開け扉を開けると、もう一人がこちらへと向かって手を伸ばして来た。両足だけ拘束されている状態であれば、今の瞬間に目の前にいる相手へと攻撃をしたのだが、足だけで無く手も頑丈な器具によって拘束されていた為それをする事は出来無かった。何故こんなにも厳重に拘束されているのかというと、捕らえられた時一人で何人もの強靱な肉体をした男たちを倒していたからである。軟弱そうな見た目に反して、元暗殺者であるジャーファルは並大抵の相手ならば複数まとめて倒す事が出来る程に強かった。
 両手両足を使う事が出来無い今相手に逆らっても無駄である事は分かっていたので、大人しく伸びて来た手に服を掴まれ檻から出る。捕まった時はいつもとは違い組織のある国の一般的な服を着ていたのだが、今は官服とよく似た服を着ている。何故そんな格好へとなっているのかというと、ここへと連れて来られた後その服へと着替えさせられたからである。
 組織の主の前まで連れて行かれた後そこでしゃがみ込む格好へとさせられ、立ち上がる事が出来無いように肩を左右から二人の男に押さえ付けられる。今から何かするつもりなのだという事は、組織の主の様子から分かっていた。
「何をするつもりですか?」
 丁寧語で話す必用が無い相手だというのに丁寧語で話しかけたのは、その喋り方が癖になってしまっているからだ。
 元々こういう喋り方であった訳では無い。昔は粗雑としかいえない喋り方をしていたのだが、シンドバッドの側にいる為にこの口調へと無理やり変えていた。
「直ぐに分かる」
 口元を引き上げながらそう言うと、組織の主が胸元に手を差し込んだ。組織の主が服の中から取り出したのは、手の平に収まるほどの大きさをした小瓶であった。その蓋を男が開けた事によって、鼻先を普通の人間には分からない程度の匂いが掠めた。
 その匂いから、瓶の中に入っているのが何であるのかという事が分かった。
「……媚薬」
「何故分かった?」
 自分の発言を聞き驚いたようにしてそう言った彼に、瓶から漂って来た匂いを嗅ぐ事によって分かったと言うつもりは無い。それは、言っても信じ無い事が分かっていたからである。
 普通の人間には出来無いそんな事が出来るのは、暗殺者時代に仕込まれたからである。仕込まれた事はそれだけでは無い。大概の毒への耐性を持っており、毒が殆ど効かない体になっていた。しかし、媚薬への耐性など持っていない。それを飲まされたりなどすれば、媚薬の効果が体に現れてしまう事になる。
 瓶の蓋を目の前でわざわざ開けた事から、彼が自分にそれを飲ませるつもりなのだという事は既に分かっていた。媚薬を飲まされる前に逃げなければいけないのだが、この状況の中逃げる事は不可能である。しかし、逃げなければいけない。
「また黙りか……。お高くとまりやがって。これだから官僚は」
 彼は自分の気位が高いと思っているようだ。それに対して勝手な妄想で話しをするなと思ったのだが、わざわざそれを口に出すつもりは無かった。今はそんな事よりも、ここからどうやって今直ぐに逃げ出すかという事の方が重要であった。
「口を開けさせろ」
 逃げる方法を眉間に皺を寄せて考えていると、そんな声が前から聞こえて来た。それを聞き組織の主へと視線を戻した瞬間、横から伸びて来た大きな手に顎を掴まれる事になった。
「止めっ……止めなさい!」
 顔を左右へと振り顎を掴んでいる手をそこから離そうとしたのだが、そんな事が出来る筈など無かった。直ぐに無理やり口を開けさせられ、瓶の口を口へと突っ込まれる事になった。
「んっ……!」
 口腔へと液体が流れ込んで来る。口の中に流し込まれた物を吐き出すつもりであったのだが、自分が吐き出そうとする事が分かっていたのか、瓶を口から引き抜くと同時に液体を吐き出す事が出来無いように口を塞がれてしまった。
「んんっ……んぅ……!」