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【シンジャ】FLOWER TAIL【6月東京シティサンプル】

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 顔を左右へと振って口を塞いでいる手をそこから離そうとすると、別の手で顎を掴まれ上へと顔を向けさせられる。上へと顔を向ける状態になっても口に含んでいる物を飲まないようにしていたのだが、やがてそうしている事に限界がやって来た。
「ん……っ」
 口の中に流し込まれた液体の量は、一度で飲みきる事が出来るほどの量でしか無い。それをごくりと飲み込んでしまった後、眉を顰めながらこれからどうするかという事を考えた。
 飲まされた媚薬は即効性の物であるので、直ぐに体が熱くなって来る筈である。その前に逃げるしか無いのだが、今の状況を考えるとそんな事は出来そうに無い。
 媚薬を飲めばどのような状態になるのかという事は知っているが、実際に自分で飲んだ事は当然無いので、薬が効いた後どの程度自分が動き回る事が出来るのかという事が分からない。
「やっと飲んだか。直ぐに効き始めるだろうから、効いて来た時が楽しみだ」
 口を塞いでいた手と顎を押さえていた手が離れると同時に、そんな声が聞こえて来た。
「そんな事知っています」
 愉快そうな様子へとなっていた男は、自分の台詞を聞き急に不機嫌な様子へとなった。今彼を怒らすのは得策では無い事は分かっていたのだが、気が付いた時にはその言葉が出てしまっていた。
 大人しそうに見えるが、それはそう見せかけているだけである。実際は大人しいという言葉とは正反対の性格をしている為、時折こんな風に本性を晒してしまう事があった。その事を反省している暇は今は無いので、その事を今反省するつもりは無い。
 少し体が熱くなって来た気がする。体が熱くなって来る事を知っている為そんな風に思ってしまったのかもしれないと最初は思っていたのだが、直ぐにそうでは無い事が分かった。早速薬が効き始めた事が分かり焦りを感じていると、怒りが収まったのか先程まで目を吊り上げていた男が自分を見下したような様子へとなる。
「そろそろ効き始めて来たんじゃ無いか? お高くとまったその顔が快楽でぐちゃぐちゃになるのは直ぐだ。その時にはまともな言葉も喋る事が出来無くなってる筈だ。その時が楽しみだな。そんなお前の姿を見て金額が上がっていく筈だ。一番高い金額を出した者が、今日からお前のご主人様になるんだ。はははっ。シンドリアの政務官の新しい仕事が性欲処理とはな」
 男のその言葉を聞く事によって、自分が今から掛けられる競りがただの競りでは無いのだという事を察する事が出来た。性奴隷を専門に扱った競りのようである。その為、自分に媚薬を飲ませるような真似をしたのだろう。わざわざ普段着ている官服に似せた服を作り着せたのは、そちらの方が高く売れると思ったからなのだろう。
「私を買うような奇特な者がいると思っているんですか?」
 閨の相手をさせるならば見目が良く若い方が良いに決まっている。凡庸としか言え無い見目をしているだけで無く、決して自分は若い部類には入らない。薹が立ち過ぎている存在である。そんな自分を買う者などいるとは思えない。呆れたようにして男の言葉にそう言いたかったのだが、そこまで出来る余裕は無かった。そう言った自分の声は苦しそうなものであった。
「いる。お前には意外に高値が付く。今まで何人も商品を見て来た俺が言うんだから間違いが無い」
「誰が商品だ……」
 男の言葉を聞き本来の言葉使いが出てしまったのだが、それを気にしている余裕すらも無かった。
 体が熱くなり始めた後は急に心拍数が上がる。その通り心拍数が上がり、まるで全力で走り続けた後のように息が苦しくなっていた。呼吸を元通りにしたくて浅い呼吸を繰り返していると、高熱に魘されている時のように意識が霞んで来た。
「そろそろ意識が朦朧として来たんじゃ無いか?」
「……うるさい。はっ……はっ……」
 男を怒鳴り付けた後も体の変化は続いていった。体に力を入れる事が出来無くなり、気が付いた時には体を押さえ付けている手に体を支えられていた。今は体を起こしていられているが、その手が無くなれば床へと体を倒す事になるだろう。
 自分が飲んでいるのは媚薬である。勿論変化はそれだけでは無い。全身が普段よりも敏感になり、下肢の中心に熱が集まりそこが固くなっていた。普段ならば今の姿を見られる事に屈辱を感じるのだが、意識が朦朧としている今は屈辱を感じる事すら出来なくなっていた。
「息が上がってるぞ。そろそろ良さそうだな。錠を外して舞台に連れて行け」
 そんな声が聞こえて来たと思うと、手足に嵌っている枷が外された。逃げる事ができる状態になったのだが、凶悪な熱に犯されている今逃げる事など出来無かった。





第一章 me'rah

「次の商品はこちらです。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、シンドリア王国の若き政務官であります」
「シンドリアの政務官? 本物なのか?」
「ええ、本物ですよ」
 質問をする声とそれに答える組織の主の声が聞こえて来たので、質問が聞こえて来た方へと視線を向けてみたのだが、こちら側の方が明るい為質問をした者の姿を見る事は出来なかった。
 拘束器具を外され檻のある部屋を連れ出された後連れて行かれたのは、香や水煙草。そして、香辛料【アニス】で香り付けがされている蒸留酒【ラク】の匂いが満ちている部屋であった。その部屋の中にある柔らかな座布団の上へとここへと自分を連れて来た者に下ろされた時は薄暗い状態で部屋の中はあったのだが、自分のいる場所だけが明るくなり先程聞こえて来た声が聞こえて来た。
 天井を見ると壮麗なパレスランプがそこにはあった。自分のいる場所が急に明るくなったのは、それに明かりが灯ったからなのだろう。
 自分が連れて来られた部屋は、状況を考えると競りの会場なのだろう。部屋の中には少なく無い人数がいる事が聞こえて来る声などから分かった。普段であればどの程度の人数が部屋にいるのかだけで無く、どの程度の広さで部屋があるのかという事を察する事が出来るのだが、頭が回らずそれらを察する事は出来なかった。
「疑われるのでしたら、こちらに来て顔を確認されても構いませんよ」
 組織の主のそんな声が聞こえて来た後、こちらへと何人かが近づいて来た。
 自分の方へと近づいて来た者の中に自分を知っている者がいるのか、本物であると囁きあう声が聞こえて来た。向こうが知っているという事は、こちらも知っている相手である可能性がある。そう思い近くへと寄って来た者の姿を見たのだが、顔を分からなくする為なのか皆深く一枚布でできた帽子を被っており、相手の顔を判別する事は出来なかった。
 いつもならば顔を見る事が出来ずとも匂いだけで判別する事が出来るのだが、全ての感覚が麻痺してしまっている為今はそれをする事は出来なかった。
「どうです。本物でしたでしょ。彼やシンドバッド王に苦汁を嘗めさせられた方もこの中にはいるのでは無いでしょうか? 彼を落札すれば、その腹いせをする事が出来ますよ」
 想像していたよりも高い地位についている人間がここにはいるのかもしれない。そうでも無ければ、そんな事を彼が言ったりしない筈である。