THE PLANETARIUM
翠の瞳は、いつだって冷めていた。ブルーには、それが寂しかった。はっとするような大人びた態度に、その双眸は相応しすぎた。
けれど今は、いっぱいに見開かれた瞼のふちに、零れ落ちそうなほどの涙が溜まっている。瞬きをする度、危うげに揺れる。なのに、一滴もこぼれない。こぼさぬよう、ジョミーが必死に堪えているからだった。下唇が、嗚咽を封じるためか、きつく噛み締められている。哀しく咽喉をふるわせ、ジョミーは寸前のところで泣くまいとしていた。
そんな状態で、それでも彼は、続く映像を凝視していた。
胸をぎゅっと抓まれるような、苦しさが、ブルーを打った。次の瞬間、ブルーは何の考えもなく、ジョミーの投げ出した手に、自分の手を重ねていた。
低い体温が、ブルーの皮膚を刺す。
空調は、適度に保たれているはずだ。少なくともブルーには、ここは暑くも寒くもない。何かが、彼の体を冷やし、彼を泣かせようとしている。それは、このプラネタリウムだろうか、それとも、別のものだろうか。ブルーには測りようがなかった。
醜い星は、徐々にその様相を変えていった。あれ、という声が、観客席のどこかからあがった。ブルーもどきりとした。蒼い。それがどこなんて、問うまでもない。よく知っているのだ。なぜなら今この瞬間もブルーは、その上に居るのだから。
地球。
目の覚めるような青だった。美しい、そう誰しもが讃えるであろう星が、そこに在る。ブルーはもう一度隣を見た。多分に水気を含んだ瞳が、青を映して、不思議な色合いで光る。
(きれい、だ、)
ふっ、と自然に、ジョミーがブルーのほうへ顔を向けた。その拍子に、湛えられていた涙が、一筋、彼の頬を伝った。やはりジョミーは、泣いているのだ。
その事実に、なぜかブルーは、安堵した。彼の指が、手のひらの中でかすかに動くのを感じた。しかし、手は、振り払われなかった。音もなく次々と涙を落とす双眸は、ブルーを捉えていた。ジョミーは何も云わなかった。
その泣き顔のなかに、こちらを見てほっとしたような、そんな気の緩みを見たのは、気のせいだろうか。ブルーは、心の中で少し笑った。そして自覚もないまま、やさしい微笑みを浮かべ、ジョミーを見ていた。
作品名:THE PLANETARIUM 作家名:ぺあ