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軽挙妄動

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Episode.7 謀





「よう、起きたか坊主。」


バンダナの男が、にやりと笑って言った。


「お前達は、何者だ?」


首根っこを掴まれたまま、男達を見回しながらロイが言うと、彼らは顔を見合わせ声を上げて笑った。


「こりゃ面白ぇや!国家錬金術師の連れだとガキでも一丁前にこんな口ききやがるんだなぁ!」


可笑しそうに言ったのは、無精髭の男だ。

無精髭の男は立ち上がるとぶら下げられた状態のままのロイに近付き、ロイの頬を突付いた。


「何をする!やめろ!」


声を上げながら、じたばたと手足を振り回す。


「随分威勢がいいじゃねぇかよ。ガキのくせに。」


ロイの顔の前に、男の顔が近付けられる。

男の酒臭い息がロイに不快感を与えた。


「さて坊主。悪いが坊主にはちょっとした人質になって貰う。なぁに、殺したりはしねぇさ。
金さえ貰えりゃそれでいい。まぁ後は軍の情報くらいだな。後々俺達の活動に役立つように。」

「情報、だと?」


恐らくテロ活動だか何だかに活用するのだろう。


「お前には関係無ぇ情報さ。大体、難しくて解んねぇだろ?」


あっはっは、と、豪快に男は笑った。

こいつらに黒幕は居るのだろうか。

観た所、そんなに大勢の仲間が居るようにも思えない。

居ても、2、3人と言う所だろう。


「おい、ガスト。その辺にガキ転がしておけ。そうだな。手だけ縛っておいてやれ。」

「解った。」


ロイの首根っこを掴んでいた大男が、答えた。

どうやらガストと言うのが大男の名前のようだ。

ガストはロイをぶら下げたまま、壁に掛けられたロープを手に取った。

部屋を見回し、適当なスペースを見つけてそこにロイを降ろす。

両手を胸の前に出させ、ロープで腕を縛るとガストは空いている席にどっかりと腰を降ろした。


「よぉ、坊主。」


不意に頭上から声がして、ロイが視線を上げると、バンダナの男がロイを見下ろしていた。


「お前、名前は?」

「お前などに名乗る名前など無い。」


ロイは不機嫌そうに眉を寄せ、言った。


「お前、子供らしく無ぇなぁ。」


呆れたように言った男は、椅子から立ち上がるとロイの前にしゃがんだ。


「俺はヴィッツってんだ。ほら、俺が名乗ったんだから、お前も名乗れよ。」


こつん、と、ロイの額を指で突付き、男・・・ヴィッツは言った。

どうやらこのヴィッツと言う男、子供が好きなようだ。


「ほら。相手に名乗らせて自分は名乗らねぇなんて、礼儀がなってねぇぞ?」


眉間に皺を寄せたままヴィッツを見上げ、ロイは不本意そうに小さく口を動かした。


「・・・ロイだ・・・」

「へぇ?ロイってのか。お前、何であの国家錬金術師のガキと一緒に居るんだ?お前、あいつの弟子なのか?」


ロイが名乗ったのを良い事に、ヴィッツは色々な事を聞いて来る。


「違う。弟子では無い。」

「ふぅん?違うのか。」


そう言って、ヴィッツはまじまじとロイを観る。


「なぁ。お前、感情表現下手だろ?」


不意に、ヴィッツが口を開いた。


「何だいきなり。」

「それそれ。そう言う所。感情表現だけじゃ無くて、甘えんのも下手だな、お前。素直じゃ無ぇだろ?
基本的にさ、不器用なんだな。違うか?」


にぃっ、と、笑って紡がれた言葉に、ロイは瞳を見開いた。


何なのだ、こいつは。

ほんの少し話しただけで、内面を見抜くような事を言って。

しかも、かなり図星だ。


「その顔は、当たりだな♪いけねぇなぁ。あんまり不器用だと、損するぜ?」


そうして、ヴィッツはロイの額をぴん、と、人差し指で弾いた。


「おい、ヴィッツ。あんまりガキの相手してっと情が移るぜ。」


長髪の男が、向こう側の席から覗き込むようにしながら口を開いた。


「煩ぇよルーツ。黙っとけ。」


ヴィッツはひらひらと手を振りながら、テーブルの向こう側の男に返した。

あいつは、ルーツと言うのか。

ロイはヴィッツの肩越しに男に視線を移し、長髪の男の名前を把握した。


「まさかお前が子供好きだとは思わなかったぜ。」


呆れたように言ったルーツに、ヴィッツは背を向けたまま、小さく「弟に似てんだよ」と呟いた。

その表情が何処か淋しそうだったので、ロイはどうやら何か事情があるのだろうと、悟った。


「所でディッシュはまだ帰って来ねぇのか?」


不意に、武器の手入れをしていた無精髭の男が顔を上げ、口を開いた。


「何処まで手紙届けに行ってんだ?早くしねぇと日が暮れちまう。」


窓の外を観て、落ち着き無く言った男の言葉に、ロイは何かあるのだろうかと首を傾げた。

ロイのその様子に、ヴィッツはロイが不安を感じたのだと思ったのか、「大丈夫だよ」と
言葉を紡ぎながらロイの頭を撫でた。

だがロイは、ヴィッツのその言葉で日が暮れると何か都合が悪い事が起きるのだと、悟る。

その証拠に、無精髭の男が日が暮れると口にした瞬間、部屋の空気が張り詰めた。

そしてそれに混じって、男達の恐怖心が見え隠れし始めた。


恐らくは。

『何か』が居る。


そう、ロイは思った。



作品名:軽挙妄動 作家名:ゆの