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軽挙妄動

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Episode.4 悪戯






その日から。

ロイの悪戯が始まった。

先ず最初に、ホークアイの家からブラックハヤテを連れ出し、司令部に連れて来た。

そうしてブレダを探し、わざわざブラックハヤテをブレダの居る場所に放した。

犬嫌いなブレダはブラックハヤテを観た瞬間司令部内に響き渡る程の悲鳴を上げ、ロッカーの上に
上ったまま固まってしまった。

次に、大量のカエルを捕まえて来ると、それを司令部内全てのデスクの引き出しに放り込んだ。

忽ちあちこちから悲鳴が上がりまくり、司令部はパニックに陥った。

唯一人、ロイの仕業だと気付いたホークアイだけは、引き出しの中のカエルに大きな溜息を付いた。


調子に乗ったロイは、今度は厨房へ行き、スプーンとフォークを片っ端から錬金術でねじ曲げ、
更に何処から持って来たのか、クレヨンで壁に落書きを始める始末。

そうかと思えば廊下で擦違う女性職員のスカートを捲って猛ダッシュするわ、受付のカウンターの
ベルは無駄に鳴らしまくるわで。

全く、傍迷惑極まり無い。


「あっはっはっは♪楽しいなぁ♪どうだ鋼の?君も参加しないか?」


執務室に戻るなり、面白そうにロイはエドに言った。


「今度は物を隠してやろうか。ファルマンあたりが面白そうだ♪」


余程、日頃ストレスが溜まっているのだろうか。

それにしたって酷すぎる。


「大佐…いい加減もうそのくらいにした方がいいんじゃ…」

「何を言うか。悪戯は子供の特権だぞ?」


胸を張って言うロイに、いつ悪戯が子供の特権になったんだとエドは頭を抱えた。

こんな状態が一月近くも続くのだろうか。

だったらいっその事、地方視察と言う事にして長期で休ませた方が良いのではとエドは考え、
ホークアイに相談する事にした。

エドが執務室を出ようとすると、ロイがぱたぱたと駆けて来た。


「何処へ行くのだ?」


エドを見上げ、ロイが言葉を紡ぐ。


「ホークアイ中尉の所だよ。」

「告げ口するのか?」


ロイの言葉にがっくりと肩を落とす。


「いや…あの…大佐の休暇願いを出して貰えるように頼んでみようかと思って…」

「休暇?」

「一月近くもこのままなんだぜ?その間に皆にバレちまうじゃないか。だったら休暇にした方がいいだろ?」


もしかして、何も考えていないのだろうか。


「まぁいいや・・・取り敢えず俺、行って来るから・・・」


そう言って、エドは執務室を後にした。


「待て、鋼の。私も行く。」


言って、ロイはエドの後を、追った。



「ホークアイ中尉・・・?」


ドアの隙間から顔を覗かせ、部屋の奥に居るホークアイに声を掛ける。

書類に視線を落としていたホークアイは、エドの声に顔を上げた。


「あら。」


ホークアイはエドを認めると、笑みを見せ、エドに入って来るよう促した。


「いらっしゃい。どうしたの?」


落ち着いたトーンの声が、エドの耳に届く。

ホークアイ中尉の声って、好きだなぁ、と思いながら、エドは部屋の中に足を踏み入れた。


「あの・・・実は・・・」


ドアを閉め、エドはぽつりと言葉を紡ぎ始める。

こそっ、と。

エドの後ろから、ロイが顔を覗かせた。

ホークアイはロイの姿を認めると、深く息を付き、小さく「解ったわ」と言葉を零した。

どうやら話が早そうだと、エドはホークアイにロイの長期休暇願いを申し出た。


「え・・・と・・・その間中尉達が大変だと思うけど・・・でもその方がいいと思って・・・」

「・・・確かに今日みたいな事が後一月も続く事を考えるとその方がいいわね・・・」


ちらりとロイに視線を移し、ホークアイは言った。


「私は子供らしく振舞っただけだぞ?」


エドの隣で、ロイが口を開いた。


「子供らしくにも程があります。」


ぴしゃりと言い放ち、ホークアイはエドに向き直った。

ロイは面白く無さそうにエドの隣を離れ、ファルマンの席によじ登った。


「幸い、今の大佐の状況を知っているのは私とハボック少尉だけだし、エドワードくんの言う通り
表向きは地方視察と言う事にしましょう。」


この機会に二人で羽でも伸ばしていらっしゃいと言うホークアイの言葉に、エドは「ありがとう」と
言葉を返した。


「そう言えば・・・他の皆は?」


部屋を見回して言ったエドに、あぁ、とホークアイが口を開く。


「誰かさんの悪戯の所為で走り回ってるわ。引き出しのカエルの捕獲やら壁の落書き消しやらでね。」


そう言って、ちらりとロイを観たホークアイの眉間に、縦皺が浮かんだ。

がたん、と、席を立ち、ホークアイはロイの傍に移動する。


「・・・何をなさっているのですか・・・?」


真後ろから掛けられた声に、ロイが顔を上げる。

デスクの上には纏められていた筈の書類が散乱しており、しかもそれらの書類で作られたと思われる
紙飛行機が、数機。

そうして、飛ばされたらしい紙飛行機が床に、落ちていた。


「子供の遊びだ。」


いけしゃあしゃあと、ロイは言い放つ。


「そうですか・・・」


ホークアイは部屋の端の本棚に足を向け、そこから一冊の薄い本を抜き取った。


「それならこれを読んで大人しくしていてくださいね。」


差し出された本を受け取り、視線を落としたロイの眉間に皺が寄る。

それは、絵本だった。

表紙には、犬と猫の絵。


「・・・君は私を馬鹿にしているのかね・・・?」


ホークアイを見上げ、ロイが口を開く。


「あら、子供らしく振舞っていらっしゃるのでしょう?でしたら子供らしく絵本でも読んで居て下さい。
それともそれでは難し過ぎますか?」


倍以上の言葉を返され、ロイは口を噤んだ。

くるり、と、ホークアイがエドを振り返った。

小さく、「全く・・・意地が悪い・・・」と、ロイが後ろでぽつりと言葉を零したのを流して。


「早速今日からでも行ってらっしゃい。今ならまだ汽車に間に合うわよ。」


そう、にっこりと微笑みながら言葉を紡いだホークアイに、エドは申し訳無さそうに小さく
「ごめんなさい・・・」と頭を下げた。


「エドワードくん。」


司令部を出ようとした時、ホークアイ中尉に呼び止められた。


「大佐のお守りは大変だろうけど、宜しくね。」

「え?いやあの…俺の方こそ…忙しいのに余計な事しちゃって…」


申し訳無さそうに、エドは言葉を紡いだ。


「ごめんなさい…」


くす、と笑みを浮かべ、ホークアイはエドの肩に手を添えた。


「気にしないで。この所忙しくて、大佐、休んで無かったから丁度いいの。大佐の仕事も片付いた事だし、
今のうちにゆっくり、ね。」


優しくそう言ったホークアイに、エドは笑みを見せた。


「うん…ありがとう…」


そうして、エドとロイは司令部を後にした。




作品名:軽挙妄動 作家名:ゆの