軽挙妄動
ベッドに顔を埋めたまま、えへへぇ、と、エドは顔を綻ばせる。
一度自覚した後程、性質が悪い。
暫らくそんな風に一人でベッド相手に照れていたエドは、ふと我に返り立ち上がると、漸く部屋を出た。
階段を降り、ホールを抜けて。
外へ出ようとした時、エドは背後から声を掛けられた。
「兄さん、何処行くの?」
振り返れば、アルが厨房の方から顔を出している。
「何やってんだ?お前?」
エドは身体の向きを変え、アルの方へと移動した。
ひょい、と、厨房を覗けば、籠いっぱいの苺が見えた。
「さっき果物売りのマリーさんって人から貰ったんだ。」
「ふぅん?」
嬉しそうに言うアルの横を通り過ぎ、苺をひとつ、口に放り込む。
甘酸っぱい味が、口いっぱいに広がった。
もうひとつ、と手を伸ばそうとした時、ふとエドは苺の陰に隠れた手紙に気付いた。
何気に手に取り、中を見る。
「あ、それ、僕達宛に来てたんだって。女将さんが渡してくれたんだ。」
「俺達宛?」
何だろう?
一瞬、何も書かれていない、白紙の紙かと思ったが、広げてみて、それは真ん中に文字が書かれている
所為だと把握した。
そこに、書かれていたのは。
『子供は預かった。返して欲しければ五千万センズ用意しろ。』
は?
子供?
「これって脅迫状じゃないか!あれ?でも子供って・・・兄さんはここに居るしねぇ・・・?」
エドの後ろから手紙を覗き込んだアルが、口を開いた。
「子供=俺なのかよ・・・」
少々不機嫌そうに言葉を紡げば、アルは「冗談だよ」と軽く言った。
「でも、それじゃ子供って・・・」
そう、言葉を紡ぎ掛けて。
二人は一斉に声を上げた。
「「大佐だ!!!」」