なんやかんやで
幸村部長が倒れた。
突然。
何で?
だってあんな、あんな、いつも通りだったじゃん。
何で何で何で、
「ああ、三人ともよく来たね」
レギュラー全員で病院に行くのは迷惑かもしれないし、ということで何人かに別れて部長のお見舞いに行くことになった。
俺はジャッカル先輩と、丸井先輩と病院を訪れた。
部長は案外元気そうだ。
いや。
顔が青白い。
何となく覇気がない。
張り詰めた空気の病室。
パジャマ姿の部長。
パワーリストを外した手首は想像してたよりずっと細い。
「俺ケーキ持って来たよ」
最初に口を開いたのは丸井先輩。
何となく予想してたけど。
っていうかその荷物はケーキだったんだ。俺何も持って来てないよ。
「わぁ、ありがとうブン太。じゃあみんなで食べよう」
その言葉に嬉しそうに笑う丸井先輩。
この人、部長の前では素直だよね。
「赤也はどれがいい?」
突然部長にそう聞かれるけど、すぐに声が出ない。
「いいッス、何でも」
「俺これがいい」
「ブン太、お前なぁ…」
だけど部長は相変わらずニコニコしてる。
「いや、いいよ。じゃあこれはブン太ね」
「うん」
「ふふ、食いしん坊だなブン太は」
その後俺にもケーキが渡され、小皿とかフォークとか何もなかったので、ケーキが入ってた箱の真上で身を寄せ合って食べることにした。黙々食べた。
たまに丸井先輩がケーキの感想を言ったりジャッカル先輩がつっこんだり、部長はそれを聞いて笑ったりした。
俺は黙ってケーキを食べた。
時々沈黙する度に、こっそり三人の先輩の顔を盗み見たりもした。
丸井先輩はいつの間にかケーキを食べ終えたらしく、病室を眺めたり、箱を見つめたりしてた。ジャッカル先輩はなぜか申し訳なさそうに俯きっぱなしだ。
幸村部長だけはどこを見てるのかよくわからなかった。
すごくぼんやりしてて、表情がなかった。