二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

神様よりもはやく

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 


「・・・離してください」
「やだ」
子供か。
と突っ込みそうになるのを堪える。
子供っていうけれどじゃあ大人と子供の境目は何時なんだろうね、もちろん年齢による分け方もあるけれど云々。
そんな反論を食らって気づいたら何故かベットの中でした、という経験は記憶に新しい。
「願い事を書けって言ったのは臨也さんでしょう。離してくれないと書けません」
書かなくてもいいなら話は別ですけど、と言い終わる前に体が離れた。
離れたけれど、僕の腰の後ろでは指が組まれたままだ。
ちょっといらっとしたので、僕は体を後ろに倒してその掌に全体重を乗せる。
それに気づいた臨也さんが、ふ、と笑う。
「可愛い仕返しだけど、分かってる?」
分かってるから僕は何も言わない。
「俺が手を離したら、帝人くん後ろにひっくり返っちゃうんだよ」
そして貴方は分かってない。
「可愛い文句ですけど、臨也さん知ってますか?」
てん、とやはり女性のような仕草で首を傾げた男に僕は尋ね返す。
「臨也さんは手を離したりしないんですよ」
きょと、と一度瞬いたその後、眉をしかめた彼に笑いが込みあげる。
「そうゆう言い方は卑怯だなあ。そう言われると、俺が君のお願いを聞いてあげたくなるって知ってるんだから。本当に質が悪いよねえ」
ごめんなさい、と心のこもらない謝罪をしながら、今度は僕から臨也さんに抱きついた。
かさりと手の中で音がして、そういえば、と思い出す。
「それにしても、突然どうしたんですか」
腕の中から見上げれば、こちらを見下ろしていた赤い瞳と視線がかち合う。
臨也さんがイベント事が好きなのは知っていた。
春には一緒に花見に行ったし、地方のお祭りにも連れていってもらった。
バレンタインもホワイトデーも何だかんだと付き合わされたし、誕生日はまあ色々とあったけれど、夏は一緒に夏祭りに行こうと誘われている。
きっと彼の好きな人間観察にもってこいなんだろうとは思うけれど。
七夕は少し意外だった。
いや、至る所に飾られた笹に乗せられた大勢の人の願いを見上げて笑う、というのであれば分かるのだけれど。
彼自身が加わるというのは予想外だった。
「ふふ、意外って顔してる」
どうやら思い切り顔にでていたらしい。
隠す気もなかったので構わないのだけれども。
「意外です。何というか、臨也さんて願い事とは対極の位置にいる気がしますけど」
へえ、と片眉を面白そうに上げて臨也さんは続きを促してくる。
「・・・、神さまを信じてるとか信じてないとか、そうゆうことじゃなくて」
そうゆう事ではないけれど、でもきっと臨也さんは神さまを信じてはいないのだろう。
理由も簡単に想像がつく。
だっていたら詰まらないじゃないか、とか言うんだろう。
そう、だからこそ。
「臨也さんは、願うなんて曖昧な事はしないんじゃないかなって。願う暇があったら自分で叶えるために動く人でしょう。願って祈って強く思うだけで望みが叶う訳がない、って思ってるんじゃないですか」
何かを叶えるためには何かを犠牲にしなければならない、とかそんな事は思っていなくとも、何もしないでいるのに、望むものが完璧な形で手に入るとは思っていない筈だ。
「・・・帝人くん、大分俺に感化されちゃったかな、ごめんね?」
思ってもないくせに、と言うのも止めておいた。
彼が僕をそうしたくてそうしてきたのだろうし、それと同じように、僕も彼にそうされたくてそうしてきたのだから。
「それで、だから何で突然願い事なんて言い出したんですか」
単に僕の考えていることを知りたいというだけだろうか。
ちなみにこの場合の“知りたい”は、好いてる相手のことを知りたいの、なんて可愛らしい知りたいじゃない。探求心とかそうゆう、彼の人間観察の一環の“知りたい”、である。

作品名:神様よりもはやく 作家名:ホップ