二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

幸福論者の有心論

INDEX|3ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 


(運命か偶然か、なんて。どうでもいい)



夏独特の日差し、熱気、汗で服が張り付いて気持ち悪い。
臨也ははぁと溜息を吐くと、両隣にいる双子の妹達に視線を落とした。内一人は白いマスクで口元を覆っている。

「たっく、夏風邪なんて引いてんなよ」
「煩いよイザ兄!引いちゃったもんはしょうがないでしょ、それよりクル姉を労わりなよ!」
「兄、謝…(兄さん、ごめんなさい…)」
「クル姉は謝る必要ないって!」

ごほごほと小さく咳き込みながら、ショートカットの方の少女、九瑠璃が申し訳なさそうに、臨也ともう一人の少女を交互に見やる。
それにまた臨也ははぁと息を吐くと、「怒ってはないから」と乱暴に九瑠璃の頭を撫でた。妹達は顔を見合わせ、にこりと笑った。
そうしている間も病院の敷地を抜け自動扉をくぐる。病院のエントランスに足を踏み入れ、臨也はほら、と九瑠璃の背中を押した。

「ほら、さっさと診察受けて」
「肯(うん)」
「お医者様に変なことされちゃあ駄目だからねー!」
「……お前は場所を弁えろ」

もう一人の妹、舞流の頭をこつんと叩けば、「はーい」の間延びした声が返ってきた。本当に反省してるのかこいつは。
そういえば、と臨也は思考を巡らす。もしかして彼は此処に入院していたりするだろうか。
そこまで考えてまさか、と自嘲する。そんな都合のいいことあるわけがない。
しかしこの辺では一番大きな病院であり、施設も十分揃っている。この辺に住んでいるのなら可能性は十分にある。
そんな淡い期待を抱いて、すぐに打ち消すを繰り返し、気付けば結構な時間が経っていた。九瑠璃もそろそろ診察が終わるだろうとふと辺りを見回せば、いない。

舞流の姿が、何処にもない。

「…あいつ、何処行きやがった」

舌打ちを溢し、慌てて辺りを探すが姿は何処にも見当たらない。しかしそれほどまでに考え込んでいた事実に自分でも驚いていた。
彼のことが絡むと、どうしてこうも何時ものように振舞えないのか。八つ当たりのような感情を抱くも、まずは妹を見つけることが先決だ。
すると丁度九瑠璃が診察を終えたようで戻ってきたが、臨也の姿を見つけてとたとたと駆け寄る。しかし傍に舞流がいないことに気付き、「妹、何(舞流ちゃんは、どこ?)」と首をきょろきょろと動かした。

「悪い、あいつ何時の間にかどっか行ってた」
「頷…所(そっか…何処にいるんだろう)」
「病院からは出てないと思うけど……たっく、」

本当、何処行ったんだか。


作品名:幸福論者の有心論 作家名:朱紅(氷刹)