序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 1
突然の光によって、家康と三成は動揺した。この現象を見て二人は交えていた手を止めた。光に包まれ、白の景色に目を疑った。
「おい、家康! これはどういうことだ!?」
三成は突然の出来事に苛立ち、家康に怒鳴るような声でどのような状況なのかと聞く。家康もまた三成と同じ気持ちで混乱をしていた。
「それはワシにも分からん……ワシとお前の決着を着けようとして……光の中に入ったようだ」
「何ぃ!? では、今は関ヶ原ではないというのか!?」
「ああ。ワシらはどうやら別の世界に入ったらしいな」
西軍本陣ではなく、光の中に入り、別の世界に入り込んだ。先程まで関ヶ原にて緊迫とした雰囲気を漂わせ、家康と三成の決着を着けようとしたところだった。
突然の光が二人を包み、関ヶ原ではない違う世界になっていたのだ。
「くそっ! 何が何だか……!」
三成は舌打ちをしながら家康に向けた刀を離して数歩下がって距離を置いた。苛立っている三成とは対照的に家康は冷徹な顔をしながら考える。
「家康っ! 貴様の足元を見ろ!」
「……え?」
声を聞いて家康は思わず呆けた声をだし、三成の言われたまま恐る恐る視線を下に向けて自らの足を見た。何と家康も三成も吸い込まれようとしていたところである!
「うわわわっ! 何だ!? 体が吸い込まれてく!?」
「どうやら私もだ……だが家康、いずれ貴様を殺してやるからな」
「……えっ?」
徐々に体は光に吸い込まれ、再び混乱する家康。同じく、徐々に吸い込まれていく三成は刀を鞘に収め、今まで狂気に満ちていた顔とはうって変わって、本来の冷静で落ち着いた態度を取っていた。しかし、殺意は変わらぬまま、憎しみに染まった目で家康を睨んだ。
「この勝負は一時中止だ。家康……貴様との決着はその後だ。その時に会ったならば殺す。忘れるな!」
「三成……」
次に会ったならばそこで決着を着けんと三成は宣言し、最後の言葉はドスの効いた声で言った。そんな三成に対して家康は彼と対峙する前の会話の時と同じ表情と声色でつぶやいた。
その言葉が最後となり、家康と三成はそれぞれ完全に飲み込まれ意識も少しずつ薄れていき、家康の視界が真っ白になった時はもう家康は意識を失っていた――
光によって包まれた白の世界から再び関ヶ原に戻ったその時、本陣には居るはずの人間の姿は全くなかった。
本陣の異変に気付いた石田軍の兵士たちが到着し、大将である石田三成と敵側の大将である徳川家康の姿が消え去ったことになり大混乱に陥った。
主を救う戦国最強と呼ばれる本多忠勝も、冷静にに対処策を考える三成の親友であり、石田軍及び西軍の参謀である大谷吉継の姿もどこにもなかった。
これから始まるのは、異世界にて起こる大きな事件
徳川家康をはじめとする戦国の英雄はある世界に迷い込み、新たな出会いと新たな発見に巡りあう
天下分け目の大戦は関ヶ原から魔法の国とも呼ばれるある世界に場所を移し、新たな戦いが今、幕を開ける――
作品名:序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 1 作家名:葉月しおん