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葉月しおん
葉月しおん
novelistID. 28858
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序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 1

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「……えっ!?」

 スバルは目を疑った。彼女の場合は魔法を使う魔導士にしては珍しいタイプの格闘技を扱った魔法を使って一掃するというものだった。
 しかし、家康は魔法を一切使わず、拳のみでからくりを今、破壊した。本来ならば魔法を使わなければ壊すことができないものをこの一人の青年が素手で機械を壊した。
 民間人だと思っていたこの青年は自分が魔法を駆使して壊した機械を素手のみで壊したのである。
 「これで大丈夫かな」と家康は手を腰に当てて確認すると、これで全ての機械を破壊したと分かり、安堵の表情を浮かべた。ローラースケート型のデバイス『マッハキャリバー』で家康のもとに近づくと、続きを話した。

「あの……ここの民間人じゃないということは、あなたは『次元漂流者』……ですか?」
「じげんひょうりゅうしゃ?」

 またしても家康にとって聞き慣れない単語が出てきて家康は首を傾げた。次元漂流者とは、いわゆる別の世界の人間がこの『ミッドチルダ』という地球とあまり変わらない魔法の世界に迷い込んだという、いわゆる迷子のようなものだ。簡単に言うと現代人が戦国時代にタイムスリップするということである。
 スバルは、そのことを簡単に分かりやすく説明すると、家康は何となく理解した。お互いに名を名乗ることに気づいた二人は、お互いに自己紹介をした。スバルはミッドチルダの出身のため、徳川家康の名前を聞いても驚くこともなく、いつも通りに交わした。スバルは『時空管理局』の一人で、憧れの人のように強くて優しい人になりたいとこの部隊に入ったのだ。

「……つまりこういうことだよな? ワシらが光に覆われて気がついたら、ワシだけがここに来て、他の者も違う場所に飛ばされたというわけだな?」
「そういうことになりますね。じゃあ家康さんは『次元漂流者』の者として私と一緒に来てくださいね」
「ああ、感謝するぞ、スバル殿」

 スバルの言葉に従い、家康は彼女の言うとおり、彼女と一緒に仲間のいる場所まで移動した。スバルは声を出さずに心の声で親友である少女に声をかけた。

『ティア、ティア! 聞こえる? 私だよ!』
『スバル!? ちょっとあんた、どこにいるのよ!? 民間人がいると言って向かったのはいいけど時間かかりすぎよ!
 食い止めているこっちの身になってよね!』
『ごめんティア! 今すぐこっちに向かうから!』

 声を出さずに心の声で相手と会話することを「念話」といい、魔導士同士が連絡などで遠くにいる人と会話するものだ。スバルはティアと呼ばれた橙色のツインテールの少女と念話でやりとりをした。ティアことティアナ・ランスターはスバルが遅いことに苛立ち、食い止めるのに一杯一杯だった。スバルはティアナに謝り、今すぐ向かうと伝えた。

「ここに真っ直ぐ向かうとみんなが待っています! 急ぎましょう! 家康さん!」
「あ、ああ!」

 スバルはローラースケート型のデバイス『マッハキャリバー』で滑るように駆け出し、家康もスバルの後を追うように地面を蹴って走り出した。

 家康はやがて若き翼達と出会う――