序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 2
ティアナとの念話を終えたヴィータはその魔法を一切使わずに素手だけでガシェットを一掃した特殊能力を持つ次元漂流者について考える。もしかしたら、その能力は隊長クラスに達するのではないかと思われる。否、それ以上なのかもしれない。
任務を終えてヴィータのところまで来たのは茶髪のツインテールで白を基調とした魔導士の服を着た女性である。手には杖状のデバイス『レイジングハート』を持っている。
「ヴィータちゃん、空中にいるガシェットを全部片づけたよ」
「あぁ、なのはか。ご苦労だったな。これであたしの出る幕はなくなったな」
「ふふっ、あの子達が成長している証拠じゃないかな?」
女性・高町なのはは微笑んで新人達の成長を温かく見守った。ヴィータはなのはに特殊能力を持った次元漂流者について説明した。
この説明にはエース・オブ・エースと称えられたなのはでさえ驚きを隠せなかった。なのはは今まで何人かの次元漂流者を見てきたし、民間人として確保してきた。
しかし、今回はどうだろうか? 今までの次元漂流者とは違い、特殊能力を持った次元漂流者がこの世界に来たのである。これは時空管理局の局員であってもそういうタイプは初めてなのだ。
魔法を一切使わずにたった素手だけで一掃するほどの能力を持つ者はエース・オブ・エースをはじめとする隊長クラスの実力者なのかもしれない
「ねぇヴィータちゃん、もしかしたらその人ってかなり危ない人かも? スバル達と敵対したりとか、しないよね?」
「んなもん、あたしでも知らねえよ。さっきのティアナの報告でもどんな奴なのか全く言わなかったんだ」
その次元漂流者とは一体誰なのか正体は分からぬままだったが、その時、なのは達がいる反対のビルから大爆発が起きた。
窓と壁を突き破り、吹き飛ばすといった豪快な爆発をしたのである。
「うぉっ!? 何だ!?」
突然の爆発になのはもヴィータも驚いた。もちろん他の民間人も大騒ぎである。
煙の中から現れたのは一人の青年だった。
「よし! これで道は開いたな! みんな、来てもいいぞ!」
ビルの壁や窓を吹き飛ばした犯人は紛れも無く家康だった。家康は右手に力を込めて正拳突きを繰り出すと壁は粉々になり、窓も突き破り、加えて凄まじい風圧によって壁も窓も吹き飛ばされたのだった。
スバル達フォワードチームも家康の大胆な道の拓き方に唖然で呆然としていた。
「た……確かにこっちに進もうと言いましたが……」
「壁を突き破るって……」
「他に道を探すという方法はないのですか?」
「というか、どうやったらそんな力が出せるんですか?」
「ははっ、手っ取り早くてよかっただろ? ワシの臣下の一人がこうやって救ってくれたんだ」」
フォワード陣のツッコミや疑問に対して家康は少し自慢げに話した。
家康とスバル達フォワード陣のやり取りを見たなのはとヴィータは家康が危険人物ではないと確信した。
「ヴィータちゃん……その人は悪い人じゃあなさそうだね……」
「うん……そうだ、な……」
あれから数分後、家康はなのはとヴィータと出会い、お互いに挨拶や自己紹介をするも、なのはは目の前にいる青年がまさかの徳川家康であると思ってもみなかった。それに対してヴィータはスバルやティアナらフォワード陣と同じく、家康の名前を聞いてもとんと分からないため、その中で唯一なのはが仰天しているのに対して驚いた。
やがて家康は機動六課と対面する――
作品名:序章・英雄、ミッドチルダに降臨す 2 作家名:葉月しおん