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「王子様と彼女の話」(サンプル&通販告知)

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「あれと一緒にしないでください。似ているとさえ言われたくありません」
「そんなに嫌がらなくてもいいじゃないですか。たしか、ルシファーさんはベルゼブブさんのことが好きなんですよね」
「なんというおそろしい勘違いを……!」
 ショックで、めまいがした。
 思わず、ベルゼブブは右の甲を口元にやった。
「彼は私のことが好きなのではなく、自分と同じぐらい有名なベルゼブブが気に入らないので、自慢したり挑発してきたりするのです」
「はー、なるほど、ルシファーさんはベルゼブブさんのことが気になってしかたがないから、なにかとちょっかいを出してくると……」
「違います! いや、違わないかもしれませんが、あなたの考えているようなのとは違うのです!」
 そんな話をしているあいだに、目的地であるドラッグストアに到着した。全国でチェーン展開している店で、見た目がにぎやかである。
 入り口付近にプラスチック製のカゴがいくつも重ねて置かれていて、その中のひとつを佐隈から渡された。ベルゼブブは素直にそれを受け取った。
 さて、風邪薬はどこだ。
 そう思いながら、ベルゼブブは店内を見渡す。
 だが、その一方で。
「あ、いつも使っているシャンプーの詰め替え用が安い」
 佐隈は特売品に眼を止め、そちらのほうに引き寄せられていく。その足取りが急に軽くなっている。体調が悪いと言っていたのが嘘のようだ。
「さくまさん」
 あわてて、ベルゼブブは佐隈を追った。
 佐隈は上機嫌な様子で、ベルゼブブの持っているカゴに詰め替え用のシャンプーとコンディショナーを入れた。
「さくまさん、次は風邪薬」
「あっ、そうだ、もうすぐ洗剤が無くなるんだった……!」
 ベルゼブブの言葉を完全に無視し、佐隈は別の棚のほうへと移動する。
 それからもその調子で、佐隈は広い店内を歩きまわり、ベルゼブブはそれについていくことになった。
 女の買い物は長い。それを実感させられる。
 ようやく風邪薬を買う段階になると、佐隈は女性店員にどれがいいのかを相談した。そして、佐隈は店員の助言を参考にして薬を選び、風邪薬の箱をひとつ、ベルゼブブが持っているカゴに入れた。