永遠に失われしもの 第17章
「そう、来ましたか--」
セバスチャンはグレルに本を渡した。
すぐ横で見ていたグレルは本を受け取り、
鞄にもどしながら言う。
葬儀屋は一人掛け用椅子に肘をつき、
考えに耽っている。
「フーン・・そういう事になってたのネェ。
これで終わると思う?」
「いえ、残念ながら。
ぼっちゃんが、
サンカリストに召還されたのも、あながち
偶然ではなかったようですね--」
「で、これからどうするわけ?」
「とりあえず、
ぼっちゃんをお風呂にお入れします。
あの堅物だと中までついて来るので、
貴方の番の時じゃないと、
できませんからね」
「アタシはガキの裸なんか興味ないから、
どうぞ、チャッチャとすませちゃってョ」
「葬儀屋さんは、どうされますか?」
「小生は...」
「ダメッ!まだ帰さないわョ。
アタシ一人じゃ、暇じゃないっ!」
グレルはそう言って、
葬儀屋の座る椅子の肘掛に座って、
背中を葬儀屋の肩に寄せ、もたれかかった
「ヒヒヒ...これを持ってきたって事は、
君はまだ報告書を書いてないんだろう?
小生が手伝ってあげるから、
やっておしまいよ...」
「そうね・・明日朝までに終わらせないと、
またウィルにしばかれちゃう」
「では御二人ごゆっくりなさってください」
セバスチャンは寝椅子からシエルを
抱きかかえ上げ、広間を出た。
--きっと夢喰らいの悪魔が、
あの小間使いに夢を見せたのだろう--
--そして次に予想されるのは--
--ぼっちゃん、やはり私は貴方を
もう起こして差し上げなければ、
ならないようです。
これ以上不確定要素が増えない内に--
--我が計画の邪魔をされぬよう--
シエルは瞳をとじたまま、
セバスチャンに身を預けている。
作品名:永遠に失われしもの 第17章 作家名:くろ