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永遠に失われしもの 第17章

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 しばらくシエルを後ろから抱きしめ、
 襟足の下にある小さな頚椎の突起に、
 まるで祈るかのように額を押し当てた後で
 セバスチャンは身体を離し、
 逆手でシエルの冷たい頬に触れ、
 シエルの顔を横に向かせ自らかがみこみ、
 唇を寄せた。


 それはただの口吻。
 血を与えるためではない、初めての。
 そしてこれから、
 自分が始めようとしていることの前触れ。

 舌を入れているわけではない。
 ただ唇をそっと重ねているだけだというのに、なんと後ろめたいことだろう、と
 漆黒の執事は思う。


 主だから?
 どこまで卑屈な下僕根性が、
 身についたのだろう。
 堕ちたものだ--

 
 心の中で漆黒の悪魔が毒づき、自らに、
 嘲笑を仕掛けてくる。



 --そう、堕ちていく--



 セバスチャンとて今までに接吻くらいなら
 いわゆる人間体としての同性とでも、
 挨拶程度に、気安く何度も経験はあるが、
 それが異性だったとしても、
 意識のない者に誘惑するような、
 口吻をしたことはない。
 そんな事をしても無意味だからだ。


 まして契約者とは、これまでに
 一切性的な関わり持ったことはなかった。
 たとえどんなに、
 それを懇願されたとしても。

 それが契約の目的だったならば、
 そもそも契約そのものを結ばなかったし、
 そんな事を最終目的に選ぶような魂には
 何一つ心惹かれるところはなかった。

 セバスチャンにとっては、性的な交渉は、
 単なる誘惑の一手段でしかなかった。
 そして契約者たちを誘惑する必要など、
 どこにもなかった。
 彼らの魂は、セバスチャンに既に、
 約束されているのだから。



 立ち上がる湯気で、漆黒の前髪が白い額に
 濡れそぼって張り付いている。
 


 そう我が悪魔としての美学を破壊する行為
 でしかない。

 このまま放っておいたからといって、
 それが何だというのだ?と悪魔がうずく。


 でもそれでは、
 このまま目覚めなくて良いと?
 執事が尋ねる。

 このまま放置すれば、夢喰らいの悪魔は
 主が決めた主の目的を、
 必ずや破壊すると分かっていて、それでも
 指をくわえて見続けるつもりなのかと。


 一方悪魔は、少年との間の、
 濃厚な血のやりとりを思い出す。
 至高の美味である人間の魂に比べれば、
 格段に薄くはあるが、
 それとてこの少年の持っていた、
 元々のあまりにも甘美な味わいを、
 十分に残している。
 それを喰らうのは悪くはあるまい、と囁く

 すると漆黒の執事は、身分差をわきまえず
 主に手を出すことへの叱責を始める。


 悪魔と執事が相克しながら、心の中で
 互いになじりあうのだ。