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永遠に失われしもの 第18章

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通訳ガイドの自宅から戻ったラウル刑事は
 旧アッビア街道を馬車で南下していた。

 
 小間使いは犯罪暦も無く、
 極普通の一般市民の様であった。
 そして小間使いが何も言わずに、ある日、
 いきなり勤め先をやめることは、
 そう珍しいことではない

 何故ディーデリッヒ大佐が、わざわざ、
 一小間使いの行方などを知りたがるのか、
 ラウル刑事には皆目検討もつかなかったが
 ロッジについての調査を頼んだ以上、
 こちらも力を尽くして協力せねばなるまい
 と考えていた。


 もっとも、ドイツ陸軍秘密情報部さえ、
 ロッジの上部組織であるイルミナティに、
 どこまで侵食されているかは、
 わかったものではない。

 だがディーデリッヒ大佐もこちらのために
 彼の個人的なつてを使って、
 ロッジの情報を集めてくれるだろう。


 小間使いの入国目的は観光になっていたが
 ローマに着いても、なんら有名な、
 観光スポットを訪れてはいなかった。

 滞在先のホテルに来客も無く、
 以前本当の入国目的は不明だ。

 通訳ガイドによれば、小間使いはまだ若く
 世間慣れしているようには、
 見えなかったという。
 一人で、外国で旅を楽しんでいたとは、
 思えなかったそうだ。

 必死で誰かを探している様子で、
 ガイドの勧める場所には見向きもせず、
 とにかく今ラウルが向かっている場所に、
 早く連れて行ってくれと言うばかり、
 だったそうだ。


 
 ・・サンカリスト地下墓地・・



 ローマ最大のカタコンベとして知られる、
 その場所は近年発掘が進み、一部観光が許されているものの、そこまで有名な観光地所というではなかった。

 ましてうら若き女性がたった一人で、
 夜訪れたいと思うような場所ではない。
 切実な理由が無ければ。


 絵を盗まれたこともあったし、
 個人的に頼まれている事であったので、
 ラウルは署には、誰にも行く先を告げずに
 地下墓地へ向かっていた。

 同僚や部下はもう既に、ラウルが帰宅した
 ものと思っているだろう。

 
 連日の捜査の疲れで、馬車の中ですっかり
 深い眠りについたラウルを御者が起こす。

 夜の帳の中、
 馬車のランプが遠ざかっていくのを眺め、
 サンカリストの入口に近づくと、
 何か地面に黒い塊があるのに気づいた。

 それは動く気配もない。
 鞄から蝋燭を出して火を点してみると、
 人が突っ伏しているのだとわかった。

 
 動きのない様子から、既に死んでいると
 思われる。
 長い髪を無造作に後ろで纏めてある。
 女性のようだった。

 近づくにつれ、ラウルはその女性の、
 ドレスに見覚えがあることに気づく。
 質素な水色のドレス・・


 それはまさに自分が昼間聴取した中年女性
 -シモーヌ・カサーレであった。

 その体をひっくり返し、隅々まで見ても
 どこにも外傷らしいものはなかった。

 が、彼女が絵をラウルに渡して、
 その絵は盗まれており、
 ここで死体で発見されることに、
 事件性がないわけはない。
 
 しかも、この場所で・・・


 ラウル刑事は死体から離れ、地下墓地へ
 下る階段を降り始めた。