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ヅラ子とベス子のSM(すこし・ミステリー)劇場

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【25】泣きたいぱっつんおに

人里離れた山奥に姉上とふたりひっそり暮らす弟おには、常日頃、人間となかよくしたいと思っていました。けれど姉上はその話を聞くと少しもいい顔をしないのでした。
「……やめておきなさい、人間なんてしょーもないひとでなしばっかりよ、」
「それでも僕は人間と仲良くしたいんです!」
弟おには拳を握って訴えました。姉おには考え込みました。親代わりの姉の自分に遠慮してか、いつも地味で控えめな弟がこんなにもはっきりものをいうのは初めてのことでした。
我が弟の成長に心を打たれた姉は、凝り固まった己の考えを改めることとしました。
「――わかったわ」
姉は弟に言いました。
「私が里へ下りて大暴れするから、あなたはそれを止めに入りなさい、」
「姉上……!」
弟は眼鏡の縁が熱くなるのを感じました。そんなことをすれば姉おには自分とも離れ、今以上に人目を憚る生活をしなければならなくなるでしょう。それでも弟の自分が人間と交流することで何かしらの鬼的成長を遂げることを期待してくれているのだ、寂しいなどと言ってはいけない、自分は姉上の思いに応えるべきなのだ、弟は心に誓いました。
それからしばらく経った良く晴れたとある昼下がり、姉は里へ出て、計画通り大暴れを始めました。ところが、頃合いを見計らって弟おにが止めに入るより早く、疾風怒濤で現れたひとりのサムライが姉をぶっ倒してしまいました。
「――……、」
もんどりうって地面に伏した姉おにの前に銀髪をなびかせて颯爽と立つ白装束の侍を、物陰からこっそり覗き見た里人の一人が声を上げました。
「しっ、白夜叉だぁぁっ!!」
ただでさえ鬼の襲来に慌てふためいていた里は大恐慌に陥りました。なんと、鬼を倒した侍の正体は鬼より性質が悪いと界隈で恐れられていた賞金首付きの伝説の鬼神だったのです。
「――白夜叉、ですって……?」
姉鬼が土を掴んでよろよろと身を起こしました。
「姉上っ!」
弟鬼は駆け寄りました。打ちのめされていた姉鬼の目にギラリと生気が戻りました。
「こいつよ! この男が父上から、……私たち姉弟から何もかも奪ったのよっ!!」
「ええっ?!」
弟鬼にはまるで初耳の内容でした。
「――ほぅ、」
弟の手を払い、自力で立ち上がった姉を見て、銀髪の男がニヤリと口元を歪めました。
「俺の一撃を喰らってまだやれるとはな」
――鬼にしておくには惜しい逸材だ、……そーいやおまえの父親だか、ヤツもなかなか、鬼にしちゃ踏ん張った方だったぜ、
「黙れ! 貴様如きが父上の名を口にするな!」
へらへらと風を受けて語る男に眦を決して姉は叫んだ、
「父上の敵ーーーーーーッッッ!!!」
「姉上っ!」
――えええええ?! なんだかいろいろとうやむやだが、トッ込む姉のあとににとりあえず弟も続いた、ダブル鬼VS鬼神、勝利の栄冠は父の敵を討たんとせん姉弟の上に輝いた。
……こうしてお尋ね者の白夜叉を倒した功績を認められ、おに姉弟は揃って里に迎え入れられて小さな茶店を持ちました。(※夜は軽くきゃばくら営業もやってるよ!)
「……あの人には悪いことしたわね」
里に居着いてだいぶ経った頃、茶店のおーぷんてらすでお茶をしながら姉がぽつりと言いました。
「えっ?」
弟は訊ね返しました。姉はさらりと続けました。
「ほら、しろやしゃとかいうあの人、実は父上の敵でもなんでもないのよ。ただの通りすがりのお侍さん」
「ええーーーっ?!」
――いまさらしれっと何を告白してくれとんじゃい! 弟は驚愕しました。姉はテヘッと肩を竦めて舌を出しました。
「やっぱりー、シンちゃんと離れて暮らすのはいやだなーって、他に何か方法ないかしらーって、そしたらちょうどあの人が通りがかったから、コレだと思って急遽アドリブ入れたのよ」
「はい?」
弟は汗でずり落ちた眼鏡を上げました。姉はくすりと笑いました。
「咄嗟の芝居だったけど、シンちゃんすんなり信じてくれたし、あのお侍さんも意外に空気読む人であっさり倒されるフリしてくれて」
――本当助かったわー、しみじみ思い返す姉に、
「そんなっ、だってあの人あのあと村人総出で役所にしょっ引かれていきましたよっ」
しょーきん首じゃーとかなんとか、取り返しつかなかったらどーすんですかっ、弟は口角泡を飛ばして詰め寄りました、顔を顰めて手のひらに避けながら姉が言いました、
「――大丈夫よ」
姉はすっと遠い目をしました。
「あの人なら、きっと自力で逃げ出してるわ」
――たぶん、
横を向いて、お茶を啜った姉がふっと息を吐きました。
「“たぶん”?! たぶんて!」
ンな無責任な、我が姉ながらのアバウトさに弟は驚き呆れ仰天しました。
……一方その頃、姉の予想通りヒィヒィ言いつつも追っ手をかわして山奥に逃げ込んでいた行きずりのお侍さんは、――チクショーあいつらおんしらずめ、こんどぜってータカりに行ってやるかんな! 夕日に向かって叫んでいましたとさ、おしまい♪