ヅラ子とベス子のSM(すこし・ミステリー)劇場
【26】きんとき姫
昔々あるところに、病的に甘いモンの好きなガタイのいい天パのお姫様がいました。
姫は城のまかないメイド頭のまっだーむ★の忠告も聞かず、来る日も来る日もどんぶり飯にあんこのっけた金時丼ばかり食していましたので、ついには糖分の摂取過多で本格的にビョーキになり、ひらひられーす天幕の猫足べっどのせんべいぶとんにウンウン寝込んでしまいました。
「……。」
――やれやれしょーがねぇな、呆れたメガネ従者とアルアルチャイナ従者がお城に先生を連れてきました。
「ふーむ、」
長い髪を一つ括りに腕まくりした先生はいぎたなく寝こける姫を注意深く観察し、秘伝の薬草のお灸をすえて、――えいや! とばかし気合いのこもった呪文を唱えました。
「!」
――バチコーーーン!!! 姫は半眼を開いて昏睡の縁から甦りました。
「……良かった、気が付きましたね」
ひらひら揺れるレースカーテンを背に覗き込んでにっこり笑った先生に、たちまちズッキュン☆、姫はひとめぼれしました。
先生が処方した薬を置いて去ろうとしましたところを、
「あっ、アテクシの婿になるまで帰しませんことよっ」(裏声)
無理難題をふっかけて城に軟禁しようともくろみました。
「――じゃあそうしましょうか、」
先生はわりとあっさり姫の要求を受け入れました。
「ええっ?!」
姫はひょーし抜けしましたが、先生の手配でトントン拍子に話は進み、ちゃちゃっと業者にゆびわ注文して婚姻届提出して式上げて、ふたりはめでたくケッコンしました。
「それじゃちょっと出かけてきますね」
夢見心地の姫の高揚気分がいまだ抜け切れていないひろうえんのよくあさ、薬に使う山草採りの格好をした先生が言いました。婿になるまで城を出さない条件でしたから、言い換えれば婿になりさえすれば外出は自由です。
「……なるべく早く帰って来て下さいよ、」
姫はしぶしぶ先生を送り出しました。しかしそれから約一年半ばかし、先生は放浪の旅から戻ってきませんでした。やっと帰って来たと思っても、――あっちの山で新種が見つかったそうだから、とか何とかですぐに出かけてしまいます。
「……。」
――ひょっとして自分は愛されてないんじゃなかろーか、疑心暗鬼の末精神不安定を催した姫の甘いモン依存がぶり返しました。次に先生が城に戻って来たとき、初往診時と同じ昏睡状態に陥っていた姫を見て先生が言いました。
「……そうですねぇ、ここは思い切って改名しましょう!」
きっと“きんとき”という名前がぜんざい……潜在意識的にあんこ依存を引き起こしてるんです、濁点振って“ぎんとき”にでもしておけばきっと症状も軽減しますよ、というのが先生の見立てでしたが、改名効果はいまいち微妙でした。
今日もお城でぎんとき姫はいつとも知れない先生の帰りを待ってひたすら甘いモンを貪り食っています。
+++
昔々あるところに、病的に甘いモンの好きなガタイのいい天パのお姫様がいました。
姫は城のまかないメイド頭のまっだーむ★の忠告も聞かず、来る日も来る日もどんぶり飯にあんこのっけた金時丼ばかり食していましたので、ついには糖分の摂取過多で本格的にビョーキになり、ひらひられーす天幕の猫足べっどのせんべいぶとんにウンウン寝込んでしまいました。
「……。」
――やれやれしょーがねぇな、呆れたメガネ従者とアルアルチャイナ従者がお城に先生を連れてきました。
「ふーむ、」
長い髪を一つ括りに腕まくりした先生はいぎたなく寝こける姫を注意深く観察し、秘伝の薬草のお灸をすえて、――えいや! とばかし気合いのこもった呪文を唱えました。
「!」
――バチコーーーン!!! 姫は半眼を開いて昏睡の縁から甦りました。
「……良かった、気が付きましたね」
ひらひら揺れるレースカーテンを背に覗き込んでにっこり笑った先生に、たちまちズッキュン☆、姫はひとめぼれしました。
先生が処方した薬を置いて去ろうとしましたところを、
「あっ、アテクシの婿になるまで帰しませんことよっ」(裏声)
無理難題をふっかけて城に軟禁しようともくろみました。
「――じゃあそうしましょうか、」
先生はわりとあっさり姫の要求を受け入れました。
「ええっ?!」
姫はひょーし抜けしましたが、先生の手配でトントン拍子に話は進み、ちゃちゃっと業者にゆびわ注文して婚姻届提出して式上げて、ふたりはめでたくケッコンしました。
「それじゃちょっと出かけてきますね」
夢見心地の姫の高揚気分がいまだ抜け切れていないひろうえんのよくあさ、薬に使う山草採りの格好をした先生が言いました。婿になるまで城を出さない条件でしたから、言い換えれば婿になりさえすれば外出は自由です。
「……なるべく早く帰って来て下さいよ、」
姫はしぶしぶ先生を送り出しました。しかしそれから約一年半ばかし、先生は放浪の旅から戻ってきませんでした。やっと帰って来たと思っても、――あっちの山で新種が見つかったそうだから、とか何とかですぐに出かけてしまいます。
「……。」
――ひょっとして自分は愛されてないんじゃなかろーか、疑心暗鬼の末精神不安定を催した姫の甘いモン依存がぶり返しました。次に先生が城に戻って来たとき、初往診時と同じ昏睡状態に陥っていた姫を見て先生が言いました。
「……そうですねぇ、ここは思い切って改名しましょう!」
きっと“きんとき”という名前がぜんざい……潜在意識的にあんこ依存を引き起こしてるんです、濁点振って“ぎんとき”にでもしておけばきっと症状も軽減しますよ、というのが先生の見立てでしたが、改名効果はいまいち微妙でした。
今日もお城でぎんとき姫はいつとも知れない先生の帰りを待ってひたすら甘いモンを貪り食っています。
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作品名:ヅラ子とベス子のSM(すこし・ミステリー)劇場 作家名:みっふー♪