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みっふー♪
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ヅラ子とベス子のSM(すこし・ミステリー)劇場

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【別冊】おっさんぽえむのーと☆2



景色がキュルキュル早回しになる。ヒキの教室、風の吹き込む窓際最後尾、HRでヒトがちょっくら気持ちよく熟睡こいてる間に九月祭の出し物決まってて、――ハァ? 模擬店でエッグタルトって、……つかまず設定がわかんねーし大体チョイスがビミョーすぎんし、いつの時代のトレンドなんだっつー、エッグタルトって確かアレだろ、中身がすんげぇベッタベタに激甘の(イヤ知んねーけど、本場の味間違って伝わっちゃったパターンかしんないけど)、……まぁいっか、――パチパチパチー、拍手で迎えられた起き抜けの天パボリボリ掻いて考えてみたら俺天国じゃん、オマケに代表責任者という名の店長だってさ、店長権限でタルト食い放題ですよイヤッフー!ってね、さすがにアレは胃に重くてそうはドカ食いできんですよいくら無類の甘いモン好きでもね、ってね、ねぇ先生、――先生? ……ってアレ?
「……先生?」
学際当日、昼下がり、差し入れのエッグタルト抱えて引き戸開けても、ガランと殺風景な展示室に人影はなくて、開襟シャツの背中に滴る冷たい汗、動悸息切れ頭痛に眩暈、
「先生!」
足元にエッグタルトばら撒いて静まり返った室内に駆け出してった出会い頭、
「?」
続きの準備室のドアが開いて白衣の先生がひょっこり顔を出した。
「どうしたんですか大声出して?」
棒立ちの姿勢の横を擦り抜けて、脇へ避けてあった教卓の前を通って、点々と床に落ちていたセロハン包みを先生の指が拾い上げる。まとめてほいと渡されて、頭ン中カーッとしてっしついでに膝もぐにゃぐにゃで、疲れたカラダにはやっぱ甘いモンですよなーって、先生が淹れてくれたお茶で菓子食ってすっかりまったりのんびりしちゃって、……しかし一向に誰も来る気配のない展示室、廃部寸前、顧問ひとり部員ひとり的な、てかそもそも俺は何部で先生は何の先生でしたっけっ? とりあえず白衣はすっげ似合ってますけどっ。
「そろそろ戻らなくていーんですか?」
――店長なんでしょ、茶化すように先生がくすくす笑う、――あれは降格されたんです、つまみ食いのやり過ぎで、茶ァ啜って何気ない素振りで返す、
「……」
カップを持ち上げていた手を止めて先生が小さく噴き出した、――そりゃ君らしいですね、って、でしょーっ?!て、同意求めて悦に入るのもなんだかなーって、別にいーけどさ。
お代わり注いでもらったマグカップ片手に改めて教室の中見渡して、前と後ろの壁一面、中央にパネルも立てて貼ってある模造紙、おそらく手書きの年表?なのか、達筆すぎて読めないけど、つか何書いてあるか読もうとするとまたアタマぐらぐらふらふらすんだけど、……そーだ、アレ作んの俺も手伝ったなーって、貴重な夏休み(とは名ばかりの補習の日々)ツブしてさ、つってほぼ毎日先生に会いに来てたみたいなもんですけどねっ! 作業関わっといて、内容は思い出せないのに、それだけはしっかり覚えてるんだおかしなことに。
「――……、」
窓の外を見て先生が何か言った。カップを置いてゆっくりと立ち上がる。食いかけのエッグタルト、残りのかけら急いで押し込んで机を回って後を追う。
「……」
……で、そっから暗転どんだけスキップしたのやら、次に目を開けたら真ん前が思きし先生のどアップだった。
「……初恋の味でしたか?」
目の前で首を傾げて、にっこり笑って先生が言った。
「……まぁ、ちょっと甘すぎですね、」
――エホンエホン、なんでか勿体つけた咳払いなんかしながら、日の落ちた窓の外、校庭では廃材燃やして打ち上げのキャンプファイア、有志一同というテイのギラついたフェークダンスの傍らで予算ギリギリ、しょっぼい花火が上がってて、……でもまぁ、おかげでドサマギでアレ的なラッキーかもしんない的な。
「いーものあげましょう、」
先生が白衣のポケットを探った。出てきたのは梅干しキャンデーのすげぇすっぱいヤツの男らしいアレ。
「……。」
――えーーー。何なんすかギャップ狙ってんすか、敢えてレモン味とかかーいらしいヤツじゃないんすね、片眉上げてビミョーな顔してたら先生またちょっと首を傾けて、
「夏バテには効くんですよ、」
わりとごーいんに包み剥いて口ン中放り込まれて、――……はぁそうっすか、うーんやっぱビミョーだなー、口ン中で混ざるとなー、すんげぇ甘えのとすんげすっぺーの、交互に自己主張激しくてさ、
「……先生、」
味覚が混濁して思考も錯乱してたのかもしんない、
「はい?」
窓際で外を見ていた先生が振り向いた、――ばりばりばり、噛み砕いたキャンデーごっくん飲み下して、
「もっかいチューしていいっすか?」
たぶんコッチはすんげぇ真顔で訊いてんだ、
「……」
少し考え込んで、だけどきっぱり先生が言った、
「……ダメです」
「ええーーーっ!!」
って、そこそんなにがっくりくるトコか? 十分予想の範囲内でしょーに。
「だって合わないでしょ? エッグタルトと梅干し味って」
先生は髪を揺らして屈託なく笑っている。
「……。」
――じゃあなんで食わしたんスか、どーゆーイヤガラセなんですかっ? 口尖らして言いたくもなる、先生がちょっと肩を竦めて言った、
「ちゅーはダメだけど、ぎゅーならしてもいいですよ」
「……えっ」
もうね、即行小躍り寸前、――まぁちょっと、くっつくと暑いですけどね、くすくす笑ってる先生の白衣の肩を羽交い絞めにする。
「……」
自分でイイって言ったくせに、先生がいちばんびっくりしててどーすんすか、――ウンまぁ、びっくりするかな、するかもねー、すんげぇ入れ食いだったもんねいまー。
「……痛いです」
手を添えて、腕の中で先生が言った。大丈夫、声は少し笑ってる、
「俺はもっと痛いです」
力を緩めないままで、何ならもっとギュウギュウにして、
「――え」
頬を寄せた先生の頭が小さく動く、――お腹でも壊しましたか、えっぐたるとと梅干しが食い合わせだったなんて、コレは考察してみなければっ、すわと腕まくりする先生、――落ち着いて下さい、気持ちはわからんでもないけどゼンゼン違います、