サルベージ短編三本
そんな鬼気迫る遣り取りに何一つ気付かぬエドワードの手に量が多すぎてにゅるにゅると滑るクリームを撫で付けながら、ロイはにたりと笑ったのだった。
「…っん、やだ大佐、そこはさっき塗っただろ?」
「ここは特に念入りに塗らないといけないんだよ。」
「ぁ…っ…馬鹿くすぐってぇって…ひゃん!」
「可愛い声で啼くじゃないか…。」
「俺…どーぶつじゃ…ね、っての…。」
「あぁ、乾燥は上の方からくる ( 大嘘 ) からね、さぁ上着も脱ぎたまえ。」
「嘘、聞いた事ねぇ…やぁん!」
「こんなにもうぐちゃぐちゃじゃないいか…。」
「それっ…アンタが沢山ぬりす…ぎ…」
行動とはそぐわない、ピンク色の会話が繰り広げられる中、むくりと立ち上がる一つの影。
ロイはセクハラに夢中になり過ぎて、ハボック達は必死になりすぎて気付かなかったのだ。
黙って部屋の隅に座り込んでいた、鋼の錬金術師の鎧の弟の存在を。
数分後、執務室に戻ろうとするホークアイを必死で押さえ付けていた両少尉は、執務室から恐ろしい断末魔の叫び声を聞いた。
殴りつける鈍い音と爆発音の合間に微かに聞こえるガショーン!ガショーン!と鋼の擦れあう音。
幼くも可愛らしい少年の楽しそうな笑い声。
「アル…いたのか…。」
「いたなら先に止めとけって…。」
安心して漸く肩の力を抜いたホークアイとがっくりと項垂れるハボック、ブレダの姿が廊下で下仕官達の注目を浴びまくっていたのは言うまでも無い。
END