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キネマトグラフ【大正パロ】

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別につく必要も無いのに、仙蔵は昔からこの幼なじみに対して何故か自分の仄暗いところを隠したがった。
でも本当は、自分の全てが目の前の彼に見透かされているかもしれない、いやそうであってほしい。これは危ぶまれる本心の裏側に貼り付いた願望だった。喋らなくても知ってほしいという、一体感のようなものを求めている。依存と呼ぶにはあまりにも臆病な感情であり、しかし独占欲と呼ぶには根深すぎた。
 一言二言、当たり障りの無い会話をしながら仙蔵は紅茶に口をつける。肩肘つく格好で仙蔵の話にぽつぽつと相槌を打つ文次郎の学生服には乱れも汚れもない。最早、新調したのだろうか。
と、用事があるんだろう、と文次郎に促されて仙蔵はああそうだったと懐から包みを出した。
「これ、やる」
「……誕生日じゃないんだが」
「万年素寒貧の学生に贈り物だよ。進学祝いだ」
 皮肉を込めたのはもちろん後者のほうだ。
 春から、二人は別々の高等学校へと進む。
文次郎は少し気まずそうにしながら、所在無さげに包みに目を落とす。この男は、すまないと思っているのだ。私が一言も口に出さないのに寂しいなんて察してしまう。
馬鹿め、と心地よいのか気にくわないのか、仙蔵にとってはもうどちらでもよかった。